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コーエン兄弟がジョン・ウェインの西部劇をリメークしたら? ハリウッドの鬼才2人組に新作『トゥルー・グリット』とアカデミー賞について聞いた
元祖を超えるか 父親を殺された少女マティ(左)は、大酒飲みの連邦保安官コグバーン(右)を雇って復讐の旅に出る © 2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
『バートン・フィンク』『ファーゴ』など、独創的な作風で知られるジョエル・コーエン&イーサン・コーエン。彼らは最新作『トゥルー・グリット』で、69年のジョン・ウェイン主演の西部劇『勇気ある追跡』のリメークに挑んだ(日本公開は3月18日)。映画ジャーナリストのデービッド・アンセンが2人に話を聞いた。
──今回初めて西部劇に挑んだわけだが、参考に昔の西部劇は見た?
イーサン 実は見てないんだ。馬のスタントとか特定の部分は見たけど、映画自体を見たわけじゃない。
ジョエル 馬のスタントで問題なのは、20年前の映画では可能だったことの90%が、今は動物の扱いに関する規制のせいでできないんだ。
イーサン 仕方がない。当時は動物の扱いがあまりにも残酷だったから。でも、おかげでやりにくい世の中になっちまった。
ジョエル 馬を転倒させるだけでも、あらゆる規則でがんじがらめさ。でもラッキーなことに、今回は信じられないくらい優秀な動物担当トレーナーがいた。それに最近はコンピューターでかなりのことができる。
──お気に入りの西部劇は?
ジョエル 私はジョン・フォード監督やジョン・ウェインのファンというわけじゃなかった。でもジョン・フォードの西部劇で好きな作品もある。『リバティ・バランスを射った男』とか。
イーサン 傾向はまったく違うけど、私たちは(マカロニウエスタン映画の監督)セルジオ・レオーネが昔から好きだ。それにクリント(・イーストウッド)の70年代のクレイジーな作品も。
ジョエル そう、『アウトロー』(76年)なんか本当にいい作品だよ。
──『トゥルー・グリット』はチャールズ・ポーティスの原作小説とどのくらい違うのか。
イーサン 首つりになった男とか、頭部が付いたままの熊の皮をかぶった男は(原作には)出てこない。
──映画のオリジナル版では、父親を殺された14歳の少女マティが泣き叫ぶ場面がある。
ジョエル 私たちの作品では、父親の遺品を見せられても彼女は泣かない。
イーサン 彼女のキャラクターは、揺るぎないプロテスタント信仰が基になっている。
──マティは復讐を誓い、犯人追跡の旅に出る。映画の終盤で、彼女が年を取り片腕のない姿で登場するのがとても良かった。
イーサン あの場面を入れずにはいられなかった。
──彼女が指を切断する場面もある。原作にはあったっけ?
ジョエル まあ、映画だから手足の何本かは切断しないと。
イーサン 基本的に『127時間』の世界だ(岩に片腕を挟まれた登山家が、自分で腕を切断して生還する映画)。
ジョエル ただし、マティが自分で切断する場面は見せたりしないよ。
──マティ役のヘイリー・スタインフェルドは実に素晴らしい。
ジョエル 配役担当のレイチェル・テナーは南部をくまなく回って、ロデオをやる少女たちに会った。数十人、数百人と話をして、結局決まったのがカリフォルニア州でもロサンゼルスのすぐそば、サウザンドオークス出身の彼女だったなんて妙な話さ。