最新記事

中間選挙はオバマの信任投票だ

ティーパーティーの正体

アメリカ政治を脅かす怒れる民衆
中間選挙の行方は彼らの手に

2010.10.13

ニューストピックス

中間選挙はオバマの信任投票だ

オバマの民主党が議席を減らすのは必至。政権の再浮上には経済対策に専念するのが一番だ

2010年10月13日(水)12時03分
エレノア・クリフト(本誌コラムニスト)

巻き返せるか? 期待が高かっただけに失望も大きい Jim Young-Reuters

 好むと好まざるとにかかわらず、11月の中間選挙はバラク・オバマ米大統領の信任を問う国民投票となる。当初は天にも届きそうな高さだったオバマの支持率も、今は平凡な大統領並み。与党・民主党は下院で過半数を失い、上院でも優位を失う恐れがある。

 わずかな救いは、共和党の予備選を勝ち上がった候補に右派の新人が多いことくらい。こんな「ティーパーティー」系候補の掲げる変化を有権者が拒んでくれること。民主党はそこに希望を託すしかない。

 変化と希望。2年前にはオバマがそれを体現していた。その後の何がいけなかったのか。諸説あるが、いずれにせよ、まだ挽回のチャンスはある。8月29日に高級リゾート地での休暇を中断してハリケーン・カトリーナ被災から5年たつニューオーリンズを訪れることも、まあ得点にはなるだろう。

 もちろん、パフォーマンスにすぎないという批判はある。だが今どきの大統領にはパフォーマンスが不可欠だ。人種差別なきアメリカ社会という神話の象徴たるオバマの場合は、特にそうだ。

ビル・クリントンに学べ

 実を言えば就任当初から、オバマも悪い時期に大統領になったものだという声はあった。何しろ難問が山積していた。だから共和党陣営も、この状況じゃ何をやっても大統領は国民に嫌われる、そうなれば共和党に追い風が吹くぞと、妙に安心していた。

 そして驚くなかれ、共和党は見事にオバマの足を引っ張った。反対する理由のない法案でも審議を妨害し、採択を遅らせた。おかげで議会は国民の信頼を失い、今や議会の支持率は史上最低の11%だ。
オバマにも非はある。そもそもの間違いは、大統領選で得た53%という高い得票率を武器にしなかったことだ。堂々と議会と対決すればいいのに、オバマは議会にこび、超党派の合意を得ようとして時間を無駄にした。

 対立を嫌う姿勢は、候補者時代には高潔と映ったが、大統領としては優柔不断に見えた。それでもまだオバマの支持率は高いが、強いリーダーとしてのイメージはこの2月から6月にかけて急落した。医療保険制度や金融システムの改革で大いに指導力を発揮したにもかかわらず、である。

 オバマは知恵者で弁舌も巧みだが、国民の心を捉え、この大統領は国民の味方だと納得させる語り口を知らない。それを知っていたのは元大統領のビル・クリントンだ。彼は性スキャンダルでつるし上げられても連日カメラの前に立ち、自分は国民のために仕事をしていると言い続けた。だから国民に信じてもらえた。

 クリントンは92年の大統領選を「肝心なのは経済だ」というスローガンで戦い、勝利を収めた。オバマも見習うといい。そもそも市場原理で動く経済に対して大統領ができることは限られる。オバマはティモシー・ガイトナー財務長官らエリート部隊に頼り過ぎた。彼らの政策は裕福な銀行マンたちを救ったが、庶民からは嫌われた。

必要なのは雇用対策

 もしもオバマが前面に出て、みんな自分に付いて来いと呼び掛けていたら、事態は違った展開を見せていただろう。今からでも遅くない。閣僚を入れ替えたらいい。

 国民は不安でたまらない。そしてその不安と怒りをオバマにぶつけている。世界中の経済が停滞している。もちろんオバマに経済の流れを変える力はない。そんな芸当は誰にもできない。だがクリントンをまねることならできる。絞りに絞ったレーザー光線よろしく、経済政策に専念にすることだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス・ニューメキシコ州のはしか感染20%増、

ビジネス

米FRB、7月から3回連続で25bp利下げへ=ゴー

ワールド

米ニューメキシコ州共和党本部に放火、「ICE=KK

ビジネス

大和証G・かんぽ生命・三井物、オルタナティブ資産運
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中