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ティーパーティーの正体
アメリカ政治を脅かす怒れる民衆
中間選挙の行方は彼らの手に
中間選挙の行方は彼らの手に
台風の目ティーパーティーの正念場
共和党の上院補選勝利で反オバマの機運が高まるが、保守派の新しい政治勢力は自滅の危機に瀕している
1月19日、マサチューセッツ州の連邦上院補欠選挙の開票経過がホワイトハウスに伝えられ、若い大統領は衝撃を受けた。革新政治の最後の偉大なとりでであるこの州で、無名の共和党候補が勝っただと? 国民の不満が大統領と民主党を権力の座に押し上げてからたった1年で、似たような不満が大統領の野心的な医療保険制度改革を破滅させようとしているのか。
ビル・クリントンも、長い夜となった94年11月8日に同じ疑問を繰り返していたに違いない。92年の大統領選で民主党候補のクリントンを大勝させたミネソタ州の有権者が、わずか2年後に、筋金入りの保守派のロッド・グラムスを連邦上院議員に選んだのだ。
この94年の中間選挙で共和党は多くの議席を獲得した。グラムスたち共和党候補は、今回の「マサチューセッツの奇跡」を起こした共和党候補スコット・ブラウン(州上院議員)と同じように、政府主導の医療保険に固執する「リベラル過ぎる」ホワイトハウスを止めると約束して勝利した。
当時、共和党を勝たせた政治勢力は不安定な有権者層で、米史上最も揺れた92年の大統領選の流れを受けていた。この大統領選にテキサスの富豪ロス・ペローが無所属で出馬し、その後に草の根組織「ユナイテッド・ウィー・スタンド・アメリカ」が生まれた。
奇抜なポピュリスト(大衆迎合主義者)であるペローが率いる保守連合は、多様な有権者の寄せ集め集団だった。工場労働者、敬虔なキリスト教徒、銃所持の権利を訴える活動家、ラジオのトーク番組のファン、退役軍人、人工妊娠中絶反対派、財政赤字に関する強硬派、連邦政府を敵と見なして不満を募らせる有権者などだ。
昨年夏に医療保険改革の対話集会を取材した私は、反対派のなかに当時の見慣れた顔触れがたくさんいることに気が付いた。
若くてリベラルなバラク・オバマ大統領に強い警戒心を抱く退役軍人。政府の医療保険で生涯面倒を見てもらえるという約束を、議会が破ろうとしていると憤る低所得者や高齢者。憲法で保障されている武器を持つ権利が大統領に脅かされているとする銃規制反対派。
そして、世界の終末が来るかのように警告する保守派のラジオパーソナリティーにあおられたリスナーもいた。なかでも保守派キャスターとして知られるラッシュ・リンボーとグレン・ベックはこの1年、民主党の新しい大統領は人種差別主義者で、実はナチスで共産主義者だと言い続けてきた。
劇的勝利でも仲間割れ
最近、民主党主導の医療保険改革に対する攻勢を強めているこうした草の根の保守連合は、「ティーパーティー」と呼ばれる。名前の由来はイギリスの植民地だったアメリカが増税に反対して起こした「ボストン茶会事件」。増税や政府支出拡大に反対する保守派たちの集まりで、「党」を意味する「パーティー」という言葉を掲げているものの、実際には緩やかな抗議運動にすぎない。
進歩的なエリート層の反応は最悪だ。この新しい政治運動が全米に広まるにつれて、リベラル派の論客は、彼らは人種差別主義者や反動主義者、無教養な愚か者の集まりだと嘲笑した。
多くのリベラル派がこの全国的な抗議活動が意味するもの──国民の不満を物語る強力な兆候──を理解していない。リベラル系雑誌ネーションの発行人カトリーナ・バンデンヒューベルはABCテレビの『ジス・ウイーク』に出演した際、彼らは無知だと切り捨てた。しかし実際はティーパーティーが見事な組織運動を展開し、今回の補選の勝利を導いたのだ。