コラム

中国経済のV字回復が疑わしいこれだけの理由

2020年04月21日(火)18時47分

北京市内の中古品販売店に掲示された休業通知(4月10日) Thomas Peter-REUTERS

<新型コロナウイルス禍からいち早く「脱出」した中国。経済が「V字回復」するという期待があるが、本当だろうか>

中国国家統計局が4月17日、2020年1~3月期の国内総生産(GDP)を発表した。それは、物価変動の影響を除く実質で前年同期比6.8%減だった。四半期の成長率がマイナスになったのは1992年に記録が始まって以来の出来事である。

19年10~12月期のGDPは6.0%増であったが、今年1~3月期にそれがいきなり6.8%減となった。下落幅は何と12%ポイント以上もあり、経済状況の急速な悪化がうかがえる。

「中国首席経済学者フォーラム」のメンバーである劉陳傑氏は3月31日、財新網において発表した論文で、新型肺炎の影響による中国全国の失業者数は最大2億人という驚異的な数字を披露した。8億人もいる中国の労働人口の4人に1人が失業した、ということとなれば、GDPの損失はそれ相応のものと考えられる。

とにかく今年1~3月期の中国経済はどん底に落ちていたことが分かるが、問題は4月からの第2四半期、すなわち4~6月期においてそれが回復できるかどうか。あるいは今年1年を通して、中国経済が第1四半期の損失を取り戻して普通の成長軌道に戻れるかどうかにある。

期待通りのシナリオにはならない

これに関して、中国国内でも海外でもかなり楽観視する論調が出ている。「中国経済はこれから急速なV字型回復を成し遂げるのではないか」という観測である。

2月には全国の生産・消費活動がほぼ全面的に停止したのに対し、3月から都市部封鎖の解除や生産再開が政府の主導下で急速に進められたのだから、それに伴って、生産と消費の両方に「どん底からの回復」が見られるのは当然である。

しかしそれは果たして、中国経済の本格的な回復を意味するのか。いわゆる「V字型回復」は今後も一つの流れとして継続していくのだろうか。おそらく楽観論者の期待する通りのシナリオにならないだろう。

プロフィール

石平

(せき・へい)
評論家。1962年、中国・四川省生まれ。北京大学哲学科卒。88年に留学のため来日後、天安門事件が発生。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。07年末に日本国籍取得。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞受賞。主に中国政治・経済や日本外交について論じている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

コマツ、4ー6月期は10%営業減益 米関税コスト3

ワールド

タイ・カンボジア軍司令官が会談、国境地帯は停戦で平

ワールド

米関税巡る表現4カ月ぶり変更、景気判断は据え置き=

ビジネス

ステランティス、下期の業績回復予想 「今後も厳しい
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 2
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 5
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 6
    運転席で「客がハンドル操作」...カリフォルニア州、…
  • 7
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 8
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 6
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 7
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 8
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story