コラム

わいせつ疑惑を徹底擁護する、アメリカの深刻な党派対立

2017年11月30日(木)11時10分

共和党支持者の中で、主流メディアを大いに信頼している人は14%にすぎない。ムーアの疑惑が報じられた後の世論調査によれば、アラバマ州住民の29%は、疑惑報道をきっかけに、ムーアに投票する確率が一層高まったと答えている。キリスト教福音派(極めて信仰心があつい人たち)に限ると、この数字は37%に跳ね上がる。

共和党支持者や信仰心のあつい人たちが未成年者への猥褻行為を容認しているわけではない。有権者は主流メディアを「腐敗」していると見なし、激しい反感を抱いているのだ。自分たちの陣営にとって不利なニュースは全て「フェイクニュース」で、自分たちの支持する政治家を引きずり降ろすための「捏造報道」だと考えている。

トランプは昨年の大統領選の初期に、ニューヨークのど真ん中で人を撃っても自分への支持は減らないと豪語した。この言葉は、党派対立が先鋭化するアメリカの行き着く先を、政治学者も顔負けの適確さで予測していたと言えるかもしれない。

何しろ、現職大統領が(幼い息子と妻の前で)、未成年者への猥褻行為の疑いが濃厚な人物への投票を呼び掛けるところまで来てしまったのだから。

本誌2017年12月5日号[最新号]掲載

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サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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