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私は写真家、「女性写真家」と呼ばれるのも好きじゃない、と彼女は言った
ラエの優れた点は、作品の根底に流れる大きな魅力として、そうした女性と社会との関係、女性写真家と社会との関係を逆手に取って、男性ではまず嗅ぎつけることができない、あるいはつい見逃しがちなものを昇華しようとしていることだ。
事実、「カメラ(写真および映像の意)を通して、女性とは何なのかを探究していきたい」と、ラエは語る。筆者自身も、こうした意味合いから意図的にラエを冒頭で女性(写真家)という言葉と共に紹介している。
インド北部のカシミールは、こうしたラエの女性観に対する探究と写真における耽美性、あるいはクリエイティブ性が融合したものだ。
カシミールはヒマラヤの麓の楽園、あるいは絶世の避暑地として知られるが、同時に、インド政府側と住民の大多数を占めるイスラム教徒側の間で激しい紛争が現在も続いている地域だ。そして、その問題はカシミールの外では実質的に忘れられているのが現状である。インドのメディアもそれを正確に報道しておらず、過小評価しようとしていると言われている。それにラエは焦点を当てているのである。とりわけ女性と子供の問題について。
3枚目の写真(上)はその1つだ。学校あるいは神学校の教室で、ブルカと呼ばれる顔まで隠したイスラムの女性徒たちを撮ったものだ。さまざまに解釈できる。単純にカシミールの厳格な女性たちのアイデンティティへの誇り、あるいは逆に本来はそれほど数が多くないはずの原理主義者たちへの抵抗のメッセージ、紛争とこうした原理主義的文化の関係、それを加速させていであろう紛争そのもの、もしくは、これら全てが絡み合った現実......。
ラエ自身は、解釈は見るものに委ねる、という。だが独断と偏見で言えば、1つだけ確実なことがある。この1枚には、どこか別世界、あるいは超自然的な緊張と美しさが混在しているのである。まるでカシミールの美しさと紛争が常にはらんでいる緊張のように。
それが人を惹きつける。そして知らず知らずのうちに、カシミールの問題に、あるいはこの女性徒たちに目を向けさせることになるのである。
Note:冒頭の「ボンベイ」という単語も、ラエ自身に敬意を評して意図的に使用している。よく言われるような英語発音とは関係なく、同地域では北部ヒンズー系をはじめとして多くの人が当初からその単語をその語音で使用していたからだ。同時に、「ムンバイ」という語音もマハラティ系を中心に当初から使われていた。ちなみに、ヒンズーでもマハラティでもその表記は同じである。
今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Avani Rai @avani.rai
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