コラム

インバウンド2500万人時代、「食」への対応が日本の課題

2023年07月12日(水)15時30分

もちろん、これも英語の口コミサイトは発達しており、タレの使い方、薬味の意味、コース料理の構成と楽しみ方など、各種の情報が飛び交っています。ですが、こうしたサイトは玉石混交であり、間違った情報も散見されます。ここは、各レストランがしっかりと「日本食初心者」向けに、料理の内容と楽しみ方について丁寧な説明を行うのがいいと思います。

今はまだ、「日本観光初心者」といっても、日本文化に積極的に関心を持つ層が中心になっています。またリピーターについては、多くを心配する必要はないでしょう。ですが、更に円安が進むと、日本の文化、特に食文化について事前のリサーチをしないで来日する層が加速度的に増えてくると思います。

仮に日本の外食産業が、英語対応は面倒などの理由で、食タブーへの対応や、メニューにおける「初心者向けの説明」を怠るようですと、仮に「外資」がそこに目をつけた場合には、巨大な市場を持って行かれる可能性があります。それこそ、現在全国数カ所で開発が進んでいるIR(統合型リゾート)では、英語メニュー中心の「なんちゃって日本食」が展開されるかもしれません。

日本社会には何となく思い込みとして、「日本食は世界一であり、だから世界中から観光客が来るのだし、別に何も変える必要はない」という感覚があるようです。確かに日本の食文化には高度な洗練と多様性があり、その高い水準を守っていくことには大きな意味があると思います。

ですが、その水準を守っていくためには、外国人観光客に向けた情報提供をしっかり行うことが必要です。仮に訪日外国人が年間3000万人、4000万人という規模になっていった場合には、否が応でもこの問題が出てくると思います。その前に、多くの国内事業者が気付いて対策をすれば、その分だけビジネスの成功というリターンが大きく取れると思います。産業全体の問題、いや日本社会全体の問題として、この問題に向き合う時期だと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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