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維新が全国政党になるためのカギは地方政策
日本維新の会の地方政策は大きな問題を抱えている(画像はイメージ写真) maruco/iStock.
<地方の視点で改革を打ち出せるか、実行可能な政策を示せるか>
4月の統一地方選で予想をはるかに超える善戦をした維新の会は、この後、もしかしたら今年のどこかの時点で実施される解散総選挙では、全国レベルで候補を用意する構えです。では、維新の会が本当に全国で勝てるのか、そして全国政党となって例えば連立政権などの軸になれるのかというと、そこには大きな問題があります。
それは、地方政策が確立していないという問題です。
これは、維新の会が大都市圏以外の選挙区でも勝てるのかという問題だけではありません。実際に国政において主要な勢力となった際に、この国をどのような方向に持っていくのかという重要な政治姿勢の問題でもあります。
維新の会としては、自分たちには地方政策はあり、既に公表しているという姿勢です。具体的には、(1)道州制を実施し、さらに自治体の統合を行う、(2)消費税の徴税権を地方に移管するなど地方の自立を促す、(3)規制改革を行って地方経済を活性化する、という3つの軸はあるようで、この点についての姿勢はとりあえず一貫しています。
問題は2つあります。
1つは、維新勢力の原点は都市の納税者の反乱だということです。大阪の維新にしても、東京の元「みんなの党」勢力にしても、どちらも「都市型の小さな政府論」が出発点です。つまり、都市住民の多くが、納税に見合う行政サービスの見返りがないことへの不満を抱えており、これに対して大胆な歳出カットを通じて、既得権益を廃止する政策が歓迎されたのでした。
大阪都構想も、基本的には府と市の合併による二重行政の廃止により、リストラ効果を狙うものでしたし、その他にも、一部の受益者向けの福祉や、文化政策の予算などをカットする政策が採られたのも、同じ理由です。
都市部偏重では支持は広がらない
仮に維新が全国に進出する場合、こうした都市の納税者の視点と、地方の視点をどう組み合わせるのか、これが大きな問題になります。都市の納税者、特に維新の支持者からすると、自分たちの納めた税金が地方にバラまかれることは許せないはずです。
そう考えると、当然地方の行政におけるコストカットを、より強烈に進める必要が出てきます。問題は、本当にそのようなカットができるのかということです。難しい例としては、食料安保、離島防衛、生態系保全など、国の根幹を成す部分に関しては、経費削減にも限界があるという問題があります。
規制緩和をしたからといって、ベンチャー企業がいきなり地方に分散するとも思えません。そこには一定程度のインフラ整備が必要であり、そうなると先行投資的なコストは必要です。とにかく、都構想(大阪維新)、官公労リストラ(元みんなの党)などの「破壊してコストカット」という政策だけでは、地方行政は成り立ちません。
維新の場合、仮に全国政党になってしまうと、この問題、つまり都市の富を地方にバラまいてきたことを「切る」のかどうかという選択が、どうしても突きつけられます。現時点では、この点に関する維新の姿勢はまだまだ曖昧だと思います。これでは、全国政党として全国から信頼を得るのは難しいと思います。
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