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即位礼のテレビ中継で見えた、皇室文化の多層的な発展
もう1つは、仏教の位置付けです。和洋中の折衷という感じで、多層的な文化の見られる即位礼ですが、日本の伝統文化の中で大きな位置を占める「仏教」の影響はあまり残っていません。
この点に関して言えば、明治以前の13世紀から江戸期までの即位礼では、今回も使われた「高御座(たかみくら)」への登壇と着座にあたって、仏教の一宗派である密教の儀式が行われていたという歴史的事実があります。一般的に「即位灌頂(そくいかんじょう)」と呼ばれるものです。
この時代の神道は、仏教と混ざり合った形となっており(神仏習合)当時の人々には何の違和感もなかったようですが、明治以降は「神道と仏教はできるだけ分離」することになって、この即位灌頂は消滅しています。
明治以前の天皇家は仏教に帰依しており、菩提寺に相当する京都の泉涌寺(せんにゅうじ)という寺院には多くの天皇の位牌があり、また境内に墓所もあったりします。
即位礼の一部として高御座で即位灌頂が行われ、また皇室の菩提寺として泉涌寺が歴代天皇の葬儀を司ったり陵墓がそこに作られたりという歴史をどう評価するのか、戦前の明治憲法化では事実上否定されていたわけですが、もう一度議論をする必要はあると思います。
天皇家の歴史の中で長く行われた伝統として復活させるべきという考え方もありますし、一方で、即位灌頂の実施や泉涌寺への帰依というのが武家政権の時代と重なることから、復活は不要という考え方もあると思います。
今回、高精細画像で詳細が伝わった「高御座」については、デザインや装飾はどう考えても神道のカルチャーではなく、密教的なものが感じられます。そう考えると、この議論はやはりしっかりやっておいた方が良いのではないでしょうか。
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