コラム

「ポケモンGO」日本リリースはインバウンド活性化にもなる

2016年07月21日(木)17時40分

adamkaz-iStock.

<アメリカなどで一足早くリリースされ、社会現象となっているスマホゲームの「ポケモンGO」。ポケモンの本場日本へのインバウンド観光客を呼び込むためにも、様々な問題点に注意しつつ日本リリースを成功させるべき>

 今月6日にアメリカで「ポケモンGO」がリリースされてから、すでに2週間が経ちました。特に11日の週に入ってからのSNSでの拡散は猛烈で、この週の時点で配信数が3000万という報道もあります。その後の週末になると、テロや大統領選のニュースを押しのけて、ちまたの話題はポケモンGO一色という感じになりました。

 ニューヨークなど大都市での熱狂ぶりも相当だったようですが、私の住んでいるニュージャージーの田舎でも、大学町プリンストンの商店街にはスマホを「かざして」歩く「一目でそれと分かるグループ」がウヨウヨしていましたし、普段なら誰も見向きもしない田舎町の「史跡博物館」や「サッカー練習場」など「ポケストップ」に指定された場所には、常に若者グループや親子連れの姿がありました。こうなると、スマホゲームというカテゴリを超えた社会現象になっていると言えるでしょう。

【参考記事】ポケモンGOは大丈夫? 歩きスマホをやめたくなる5つの裁判例

 しかし「ポケモン発祥の地」である日本でのリリースは遅れています。これは日本が「巨大市場」ではあるが「最大市場ではない」ことや、社会習慣や法制などの障壁があるために「最初にリリースできない」ことなどが理由としてあるようです。そうなると「2番目以降」ということになりますが、リリースへの環境づくりに時間がかかっているうちに、世界各国で予想以上の大ブームになってサーバ負荷の問題も出てきているのだと思います。

 このように、日本のリリースの「遅れ」は構造的に仕方がないことです。iPhone の日本発売が1年遅れたことに比べれば、今回の遅れは数週間単位の短いものでしょう。

 ちなみに、先行して利用が始まっているマーケットでは、いくつかの決まったパターンのトラブル事例が報告されています。日本でもリリースを前にして、例えば多くの教育委員会では夏休みを迎える子どもたちに注意を喚起しているようです。また、政府の内閣セキュリティセンター(NISC)は20日、ゲーム時の注意事項をまとめて発表しています。

 一つ、問題提起しておきたいのは、このポケモンGOは、バーチャルとリアルの「融合」をコンセプトにしていることです。この発想で作られたゲームは過去にもありますが、ここまで本格的に普及したのは初めてで、今回の成功によっては、以降同じようにバーチャルな世界とリアルな世界を融合したゲームや表現がブームになる可能性があります。

 概念で言えば、「VR(仮想現実)」から、「AR(拡張現実)」に進むことになります。<参考>「ポケモンGOはARの発展にとって野球で言えば2回表(「フォーブス」記事)」

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

川崎重社長、防衛事業の売上高見通し上振れ 高市政権

ワールド

米16州、EV充電施設の助成金停止で連邦政府を提訴

ワールド

中国最新空母「福建」、台湾海峡を初めて通過=台湾国

ワールド

ウクライナ安全保証、西側部隊のロシア軍撃退あり得る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story