プレスリリース

国総研、人々の多様な活動・移動を再現する新たなシミュレータ(ABS)のユースケースとして西遠都市圏(静岡県)における将来シナリオ分析を公開

2025年03月28日(金)16時00分
国土交通省 国土技術政策総合研究所(以下 国総研)では、「全国都市交通特性調査(全国PT調査)データを用いた標準的なアクティビティ・ベースド・シミュレータ(ABS)」の開発・検討を行っており、本日(令和7年3月28日)より、国総研による地域伴走型のユースケースとして、西遠都市圏(静岡県)における都市交通施策の実施の有無からみた人々の暮らしの変化に関する都市構造シナリオ分析の内容を公開します。

・プロトタイプ版シミュレーション西遠適用検証
URL: https://www.nilim.go.jp/lab/jcg/committee_3.html
・全国PT調査データを活用したABS
URL: https://www.nilim.go.jp/lab/jcg/committee_2.html


国総研では、少子高齢化・新技術(ビッグデータやリモート技術等)の進展、新たな生活様式等を背景に、これからの時代に対応した効率的で簡便な交通行動シミュレーション手法の構築のため、都市における人々の多様な活動・移動を再現するABSの開発・検討を行っています。
本開発は「都市交通調査ガイダンス」及び「都市交通調査プラットフォーム」(国土交通省都市局、 https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_tk_000024.html )でも紹介しています。
今後の本格公開に向けて、継続的な改善とユースケースの充実を行っていくため、令和6年10月にプロトタイプ版ABSの貸出を開始し、現在に至るまで、地方公共団体や大学等の都市・交通施策に携わる多くの皆様から貸出希望やご期待の声があり、試行的に活用いただいています。
各都市でのユースケース開発状況は、順次、HP等で紹介してまいりますので、シミュレーション技術を活用した将来都市のシナリオプランニングの可能性を感じていただけたら幸いです。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/430829/LL_img_430829_1.jpg
ABSの概要と活用

■ABSの特長
(1) 現況再現
地方公共団体等が行う各都市圏PT調査では、詳細な空間解像度で精度担保したデータを取得するためには多大なコストがかかり、特に財政面等で厳しい状況にある地方都市において実施が困難となりますが、国が収集した全国PT調査データの傾向等から個人の1日単位の詳細な交通行動を確率的に推計するABSを活用すれば、各都市圏における実態調査を補完することができます。この際、地域で取得しているビッグデータや交通系ICデータ等を組み合わせて、現況再現性を高めることが可能です。

(2) 多面的な分析と総合評価
都市圏における各個人の性年齢、居住地、勤務地、就業形態、免許保有等の属性情報データと、1日の、業務、通学、通院、送迎、買物、私事等の活動の内容と時間、場所の選択状況、また、交通手段の種類、料金等の移動の内容と時間、場所の選択状況などを、詳細のアウトプットデータとして個人単位で出力できるため、クロス集計によるトリップパターンの把握等の多面的な分析や、交通、賑わい、健康、環境、産業、防災等の多分野での評価指標を確認し、多様な人々の暮らしに寄り添った都市の総合評価が可能になります。

(3) 将来予測とシナリオプランニング
サンプルデータから説明変数を特定(パラメータ推定)し、再現する数理モデルを構築しているため、インプットデータやパラメータを変化させることで、地域性や施策の実施の有無を表現でき、将来予測で用いることが可能です。複数の将来シナリオを事前にデータで可視化し、関係者で比較分析、議論しながら都市戦略を立てるシナリオプランニングが可能になります。


■西遠都市圏でのABS適用ユースケース
(1) 現況再現性の検証
プロトタイプ版のシミュレータをそのまま適用した場合と、西遠都市圏の移動実態データで補正した場合の2パターンの出力結果を比較し、再現性の検証を行った結果、補正することにより、都市の移動実態に概ね整合させることが可能なことが確認できました。

(2) 都市構造シナリオ分析
静岡県浜松市の総合計画や都市計画・都市交通マスタープラン、立地適正化計画、地域公共交通計画等を参考に、施策実施のシナリオを整理し、現在の課題が進展した場合の趨勢シナリオに加え、都市交通施策に取り組んだ場合の都市構造シナリオについて2パターンの検討を行いました。都市構造シナリオ分析では、コンパクト・プラス・ネットワークの形成のための公共交通沿線への都市機能誘導、居住誘導等の都市全体の取り組みを行った場合と、居住誘導のみを行った場合について、それぞれ、まちの持続可能性、暮らし(高齢者の外出、子供の移動と就業者の送迎)、防災(河川氾濫区域と被災者や要支援被災者の滞留人口の関係)等の多様な観点から評価可能なことを示しました。
静岡県及び浜松市からいただいたコメントについてもHPで紹介しています。
※なお、本検証は浜松市等における実際の政策検討に用いられたものではありません。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/430829/LL_img_430829_2.jpg
西遠都市圏ケーススタディ:シナリオパターン等の設定
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/430829/LL_img_430829_3.jpg
西遠都市圏ケーススタディ:シナリオ分析結果

■全国から得られたニーズと今後の展開
(1) 主体別の活用シーン
特に、地方公共団体等が、次期、総合交通戦略や地域公共交通計画、立地適正化計画等の検討にあたり、将来都市構造の見直しのため現況の人の移動を効率的に把握したい、公共交通施策の実施エリアに関する優先順位の検討のため将来シミュレーションを行いたいといったニーズがあります。これを支える民間コンサルタント等が、データ整備やABSを活用した分析や提案の技術力を発揮することも想定できます。大学等の研究機関がABSの機能拡張の研究開発や教育で活用したいといったニーズも得ています。

(2) 今後の展開
ABS等を活用して目指す都市交通プランニングと産学官のエコシステムの構築等に向けて、今後の戦略と重点アクションをとりまとめ、近日中に公表する予定です。


■組織概要
商号 : 国土交通省 国土技術政策総合研究所
代表者: 所長 福田 敬大
所在地: 〒305-0804 茨城県つくば市旭1番地
URL : https://www.nilim.go.jp/


【本件に関する一般の方からのお問い合わせ先】
国土技術政策総合研究所 都市研究部
都市施設研究室 主任研究官 小笠原 裕光(内線4515)
TEL : 029-864-2211(代表)
E-mail: ogasawara-h92ta@mlit.go.jp


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プレスリリース提供元:@Press
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