コラム

チャットGPTが反社の手下になったら、どうする?(パックン)

2023年03月11日(土)21時02分

経済の変革はそれだけではない。マイクロソフトのBingを始め、検索エンジンはAI活用型に転換されようとしている。つまり、今のように、知りたいことをググったあと、気になるリンクをクリックする作業が省かれて、一門一答で知りたいことをAIにすぐ答えてもらうわけ。

早くて便利だが、現在のインターネットは広告ベースで成り立っている。ユーザーが「一答」で納得し、情報源のサイトを見ないようになると、そのサイトに載っている広告も見なくなる。サイトに広告が載せられなくなる。サイトにお金が入らなくなる。サイト自体がなくなる。その先どうなるのかは、誰にもわからない。

もちろん、サブスクリプション(定額課金)モデルなどに切り替えることができたらいいが、容易ではないはず。「インターネットの情報は無料だ」というのが民衆の常識。AIが普及したからって、お金のかかる検索はしたくないだろう。例え払いたくても、AIに仕事を奪われるから払うお金がなくなっているし......。

結論をチャットGPTに聞いてみたら...

人間を守るために開発されたAIが人間を滅亡させようとする。意識を持ったAIが自己防衛のために人間と対峙する。自己利益を求めるAIが人間をだまして利用する。などなど、ホラー気味なあらすじのSF映画や小説が多い。ゆくゆくはわれわれもそんな危険性も心配しないといけないが、今我々が目撃しているAI革命はそこまで極端な展開を見せていない。AIは意識も人格ももっていないし、人間と対立する構図にはなっていない。

だが、シンプルで悪気の無いAIでも上記のような甚大なリスクを伴っているのだ。革命が起きる前にその対策を考えないといけないと、僕は思う。情報のソースや信ぴょう性、画像や映像の制作者の確認。公平な富の分配。AIの悪用防止。個人の経済的、社会的、精神的な安定保障。インターネットを維持可能なビジネスモデル。これらを構築できるまでは、AIの全面導入を遅らせるべきではないか。パンドラの箱の中身は見えている。急いで開けなくてもいいのでは?

もちろん、AIの導入を遅らせることは、技術的進歩や競争力の損失につながる可能性があるため、必ずしも最善の選択肢ではありません。代わりに、AIの開発や使用に関する適切な規制や監督を行い、リスクを軽減することが重要です。また、AIの開発や使用に対して意識を高め、倫理的な考え方を重視することも大切です......。

ちなみに、最後の段落は、チャットGPTが書いたものだ。怖っ!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 3
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 4
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story