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五輪をIOCから守るためにできる3つのこと
大会予算に上限を!
今回は感染拡大の危険性が大きかったかもしれないが、五輪開催地の市民の最たる不満と言ったらだいたいコストだ。東京五輪の赤字額は最大で2兆7000億円と、エコノミストは試算している。実はこれは五輪歴史家が驚くような数字ではない。ある研究によると1960年以降の全ての五輪が予算オーバーしている。今や「五輪開催は損するもの」という通念は、「手を離した後でも、叫ぶとハンマーがもっと遠くへ飛ぶ」とか「近代五種競技の種目を全部言える人はいない」と並ぶほどの、「オリンピック常識」の一つになっている。
では、招致の段階で予算の上限を決めておいたらどうでしょうか。「いくら出せるのか」ではなく「この予算の中で何ができるのか」を競ってもらうのだ。それもどこの国でもチケット売り上げとスポンサーの協力金などでねん出できるほどのリーズナブルな設定が大事。例えば、インフラなどを除く競技関連だけの予算を30億ドルにしてはいかがでしょうか。感覚が鈍っている今ではかなり安く感じるが、2004年のアテネ五輪はこれぐらいでできたし、普通にいいオリンピックだったよ。快適な予算設定を受けて、北島康介さんは「チョー気持ちいい」と喜んでいたね。
いや、そうではない。アテネは競技関連以外のコストも多くて、当初の予算の倍以上に膨れ上がり、最終的に90億ユーロもの巨費が投じられた。その負担が「ギリシャ危機」の一因だったという説もある。だから、候補地の資金力や集金力も検証しながら、絶対に当初の予算を超えないための措置の導入も必要だろう。その措置というのは、開催費用の1~2割をIOCに負担してもらうことだ。今はIOCが「もっと立派な会場を」とか「もっと新しい競技を」などと注文することから支出が増える。他人のクレジットカードで買い物しているような状態だ。しかし、ツケが必ず回ってくるようにすれば、IOCも開催都市と帳尻を合わせて必死に予算を守るようにするだろう。
本当のアスリートファーストに!
予算の額だけではなく、お金のかけ方も批判の対象となる。特に、オリンピックの主人公であるはずの選手よりも、黒子のはずの「要人」に大金を投じる現状が顰蹙を買っている。例えば、IOCのバッハ会長は五輪期間中にホテルオークラのスイートルームに宿泊した。報道によると、一泊250万円の部屋だ。つまり、ほとんどのオリンピック選手がスポーツ活動で稼ぐ「年収」を上回る金額が、会長の「一泊」のホテル代に費やされているのだ。しかも特別に家具を持ち込み、専属シェフを海外から連れてきたそうだ。選手にも、ホテルオークラの料理長にも失礼な気がする。
また、広島の平和記念公園を訪れたバッハさんに379万円の警備費がかかった。これは結局県と市が負担することになったが、そもそもなんでそこまで厳重な警備が必要なのだろうか?ディスられた料理長はそこまで怒っていないだろう。何から会長を守ろうとしているかわからないが、市民の批判からは守り切れていないのは確かだ。
もう一つよく知られている問題点は開催のタイミング。パンデミックの問題は別にしても、一番蒸し暑い時期にわざわざスポーツの祭典を開くことは、尾身会長の言葉を転用すると「普通ではない」だろう。そのタイミングの理由は有名だ。秋まで待つと、アメリカでは野球のプレーオフとアメフトの開幕、ヨーロッパではサッカーのシーズンにかぶり、視聴者の取り合いになるから、放送局が嫌がるのだ。放送権料がIOCの予算の73%を占めるので、首脳陣としては「お得意さん」の気持ちに答えるのはむしろ「普通」だろう。
しかし、収入の分配においても、開催時期においても、被害者となっているのは選手のみなさん。外から見ても、低賃金で重労働をさせる「やりがい搾取」のイメージは拭えない。これこそ古代ギリシアから伝わったオリンピックの理想からほど遠い。奴隷が殺しあう競技があったのは古代ローマの方だ。
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