コラム

スマホで乾電池を操作。インテリジェントな電池アダプタが起こすIoT革命

2016年01月07日(木)16時30分

市販の電動歯ブラシにMabeeを組み込んで、振動が止まるまでしっかり磨くような動機付けを子どもに与えるというような実用的な使い方もできる

 これまで、物理的な製品同士がネットを介して情報をやり取りし協調的に機能するIoT(Internet of Things)環境実現のためには、専用の対応製品を開発することが必須と考えられてきた。

 しかし、さる日本のベンチャー企業が、身近な生活用品に数多く含まれるあるものに着目し、IoTの可能性を広げる試みにチャレンジしている。それが、この4月に出荷予定の、無線通信機能を内蔵した電池アダプタのMabeee(マビー)である。

 Mabeeは単3電池サイズで、一回り小さくコンビニなどでも容易に入手できる市販の単4電池を装着できるようになっている。この単4電池が通常の電力供給を行うとともに、ユニットに内蔵されたBluetoothモジュールを駆動し、スマートデバイス上の専用アプリとの通信を可能にするのだ。

 当然ながらMabeeは、単3電池に対応したすべての製品に装着することができ、その瞬間から、その製品はスマートデバイスから制御できるコネクテッド・プロダクトに変身する。しかも、Mabeeeに置き換える単3電池は、原理上、1本だけで済む。

 こうしたインテリジェントな電池アダプタは、海外にも先例はあるが、それが電流のオン/オフだけをサポートするのに対し、Mabeeeはスマートデバイス側のセンサー機能などと連動して、微妙な出力のコントロールを可能とした点が大きく異なっている。

 そのため、Mabeeeでは、スマートフォンの傾きや振る強さ、マイクに向かって叫ぶ声の大きさ、Mabeeeからの距離など、様々な操作方法によって、おもちゃが進む速さや照明の明るさなどをアナログ感覚で増減できるというわけだ。

 市販バージョンの正式リリース後には、対応アプリの充実や、最近増えつつある単4電池を利用する製品向けの、より小さな電池をセットするMabeeeが求められるところだが、まずは、目の前の電動ぬいぐるみやミニ四駆などがコントロール可能になる面白さを味わいたいと思う。

電池から始まるIoT革命:Mabeee

Mabeee1.jpg

Mabeeeは、単4電池をセットすることで単3電池として利用でき、電流のオン/オフや出力を無線コントロール可能となるアダプタ型のデバイスだ(イメージは開発中のCGで、市販されるものと異なる可能性がある)。


Mabeee2.jpg

たとえば、単3電池で機能するオモチャであれば、基本的に何でもMabeeeを利用してコントロールできるようになる。その際には、装填する電池の中の1本だけをMabeeeに置き換えるだけでよい。


Mabeee3.jpg

ただレールの上を走るだけだったオモチャの電車も、このようにスマートフォンから発車と停車の制御が可能となる。


Mabeee4.jpg

ボタンによるオン/オフのほかにも、スマートフォンの傾きや振る強さ、マイクに向かって叫ぶ声の大きさ、あるいはMabeeeからの距離に応じて出力をコントロールしたり、タイマー制御もできる。


Mabeee5.jpg

スマートフォンの傾きによってスピード調節を行えば、駅に近づくにつれて減速して停車し、また発車して加速するような動きも簡単に実現できる。


プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story