コラム
大谷和利 魅惑するプロダクツ
スター・ウォーズの球形ロボトイも作ったスフィロ社の教育向けロボット
スフィロ社は、『スター・ウォーズ』の新キャラクターの球形ロボ、BB-8のトイバージョン開発も手がけた。
アメリカの初頭・中等教育現場では、今、STEM(ステム)あるいはSTEAM(スティーム)と呼ばれる教育カテゴリーが注目されている。Science(科学)、Technology(技術)、Engeneering(工学)、Mathematics(数学)という理系4分野の頭文字から名付けられたものがSTEMであり、STEAMではそれに文系のArt(芸術)が加わるのだが、個人的には、後者のほうがあるべき姿ではないかと考えている。
余談だが、英単語のStemには「(植物などの)茎や幹」という意味があり、Steamは、かつての産業革命の原動力だった「蒸気機関」をイメージさせる。そうした点からも、なかなか巧みな命名といえるだろう。
いずれにしてもオバマ大統領は、それらの科目を統合的に扱う教育を推し進めることが今後の国づくりの礎となると考えており、これを受けて現場でも様々な取り組みが行われるようになった。中でも注目されるのが、12月公開の映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の新キャラクターとして登場するドロイド、BB-8のトイバージョン開発も手がけたスフィロ社の動きだ。
同社は、BB-8のベースでもある球形ロボット、Spheroを開発・販売するかたわら、独自のSPRK(スパーク)というカリキュラムを個人や教育機関に無償で公開することにより、ロボティクスを軸にしたSTEM/STEAM的な学習法を提案してきた経験を持つ。SPRKとは、Schools(学校)、Parents(親)、Robots(ロボット)、Kids(子ども)の頭文字を組みわせた造語であり、Spheroのプログラミングを通じ、画面内だけでなく実体のあるモノを制御して様々な教科の支援を行なうプロジェクト名称となっている。
ノーマルのSpheroと既存のプログラミングアプリを使ったSPRKによるレッスンは、世界の12,000校に及ぶ学校で採用されており、この10月にはホワイトハウスにおいて、複数のSpheroを太陽系の惑星に見立てて軌道上を周回させるデモも披露された。このSpheroによる太陽系のシミュレーションは、元々ウィスコンシン州のスアミコ小学校の3年生たちが行ったプログラミング実習をベースにしており、適切なツールが子どもたちの創造性を伸ばすことの好例といえる。
Spheroとプログラミングアプリを使ったレッスンは世界の12,000校に及ぶ学校で採用されている。
スフィロ社は、SPRKプロジェクトをさらに推進する上で、内部のメカニズムが目に見えるように筐体を透明化したSphero SPRKエディションを開発。併せて、ブロックを並べるようなビジュアル環境でSpheroを制御でき、それを一般的な文字ベースのプログラムに変換して表示することも可能なSPRKアプリもリリースした。
iPadでブロックを並べるようにSpheroを制御できる。
それを一般的な文字ベースのプログラムに変換して表示。
このSphero SPRKエディションとSPRKアプリを利用した教育は、日本でも徐々に注目され始めており、先ごろ、義務教育の公立校として初めて茨城県古河市の大和田小学校において公開授業も行われた。
SpheroやSphero SPRKエディションは、人型ロボットのように高度なことはできず、単に転がって移動するボールが自動化されただけの製品に見える。しかし、自分も子ども時代に単純な丸いガラス玉に過ぎないビー玉を使った様々な遊び方を考え出したように、そのシンプルさの中にこそ無限の可能性が隠れているのである。
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