コラム

オリンピックの終焉──裸足の王者アベベはもういない

2021年08月07日(土)20時03分

それなら潔くプロスポーツだけ残したらよい。ワールドカップをやればよい。サッカーが典型だが(ワールドカップもFIAAもカネにまみれておかしなことになってはいるが、それはプロスポーツ、スポーツビジネスの世界だから、勝手にやればよい)、野球は大リーグの意向次第だが、柔道も卓球も、それがビジネスになっている。いわんや、テニスやゴルフにおいておや、である。

だから、オリンピックのサッカー、野球、テニス、ゴルフは、ソフトボールよりもつまらないのである。もっと重要な試合がある選手たちと、13年ぶりに晴れ舞台で戦える選手の差である。

オリンピックは、オリンピックという舞台以外では舞台が存在しないスポーツのためにあるのだ。

陸上競技も多くがプロ化し、もはやオリンピックもいらないかもしれない。砲丸投げはオリンピックに残したらよい。

いったんカネによって選手の能力に明らかな、埋めることができない差がついている以上、オリンピックの役割は終わり、プロスポーツだけが残ることになる。

アスリートファーストから程遠いのは、プロ化のせいではない。お祭り騒ぎでカネを動かすことにより、関係者数が膨れ上がることが悪いのであり、オリンピックが極端にアスリートファーストから遠いのだ。

競技と無関係の口出しが通る

前日の夜に、朝7時から6時にスタートを繰り上げる、などということが起きてしまう。プロスポーツとなり、マラソンだけの世界大会なら、大会事務局が、レースの公正だけのことを考え、繰り上げるなら、もっと前に決断できたし、競技に関係ない人々が、いろんな方面からの批判、口出しに対応することはなく、時間を変えずに行うこともできたはずだし、競技のことを最優先に考えられたはずだ。これでフェアなレースができるはずはなく、最高のパフォーマンスなど期待できるわけもない。

だから、オリンピックはもう役目を終えたのだ。

***

もうひとつ、明らかにオリンピックが成立しなくなった理由がある。

国を背負って戦うことの意味がなくなったからだ。

いや、意味がなくなったどころか、それはおかしなことだ。

僕らは、すばらしい選手たちを応援する。選手のパフォーマンスを応援する。日本を、国旗を、金メダルを応援するのではない。

コスモポリタン、という言葉は廃れているぐらい、いまや、国籍、人種によるグループ分けはマイナスの意味しか持たないし、不自然なものになっている。

その世界で、国同士を戦い合わせる意味はないどころか、グローバル社会にとって負の意味しかない。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独VW、28年末までにコスト20%削減を計画=独誌

ワールド

英首相、国防費増額の加速必要 3%目標前倒し検討と

ワールド

ロシア、和平協議で領土問題含む主要議題協議へ=大統

ワールド

ロシア、ナワリヌイ氏毒殺改めて否定 欧州主張「虚偽
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story