最新記事
シリーズ日本再発見

原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍』...日本「差別」が露わな小説から変わったこと

A New and Improved “Shogun”

2024年03月14日(木)18時02分
ジェフリー・バンティング
歴史ドラマ「将軍」

虎永はブラックソーンと鞠子を使って天下統一の野望を遂げようとする(『SHOGUN 将軍』より、COURTESY OF FX NETWORKS)

<偏見だらけの歴史小説を、物語の筋は生かしつつ、日本視点の政治スリラーに衣替えして見応えのある作品に>

小説の映像化のように、既存の物語を別の媒体で作り直す場合の方法論はいろいろある。原作に可能な限り忠実に作るやり方もあれば、逆に原作をまるっきり改変する方法もある。前者の代表例が映画『ノーカントリー』なら、後者の代表例は『若草物語』を翻案した韓国ドラマ『シスターズ』だろう。

FXが6年をかけて制作し、現在ディズニープラスの「スター」で独占配信中の歴史ドラマ『SHOGUN 将軍』は、その中間を行く作品だ。原作はジェームズ・クラベルが1975年に発表した小説『将軍』だが、今回のドラマ化は見事の一言に尽きる。

ステレオタイプと東洋趣味が鼻につく原作を、それに忠実でありながらも、現代のグローバルな視聴者に向けた力強い歴史大河ドラマに仕立て直している。

物語の筋は原作とほぼ同じ。太閤亡き後、有力大名の吉井虎永(真田広之、モデルは徳川家康)は、征夷大将軍になって天下統一を果たす野望を胸に秘めていた。

そんな混乱期の日本にやって来たのが、イングランド人航海士のジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャービス)だ。目的は、日本におけるカトリック教会の勢力を弱め、イングランドの影響下に日本を置くこと。彼は虎永の配下となり、カルチャーショックに見舞われ苦労しながらも新しい世界に適応していくなかで、高貴な女性、鞠子(アンナ・サワイ)と出会う。

原作はまさに、一昔前の男性読者受けを狙ったような作品だ。歴史小説で、無骨な白人男性が主人公。彼は男性読者にとっては自分を投影できるようなタイプで、作中の女性からちやほやされ、最終的に絶世の美女を射止める。

ブラックソーンのモデルとなったのは西洋人ながら武士となり、家康のアドバイザーを務めた実在の人物、ウィリアム・アダムズ(三浦按針)だ。だがクラベルは、史実の枠を超えて物語を紡いだ。

240319p50_SGN_03.jpg

ブラックソーンが日本にやって来た目的はイングランドの影響下に置くためだった COURTESY OF FX NETWORKS

小説にはかなりあからさまな人種差別が見られる。自分はこんな差別発言はしないと思いつつ、実際には差別意識を持っているタイプの男性読者なら、主人公に対して優越感と親近感の両方を抱いただろう。

日本人の登場人物は西洋人の名前をうまく言えない。クラベルはこれを面白がって書いている節がある。また日本女性はエキゾチックで好色な人形として描かれている。

自分たち以外の視点を持っていなかった出版当時の欧米の読者からすれば、進歩的な作品だったのかもしれない。物語が進むにつれ、主人公は日本と日本人の事情に思いを致すようになる。それは戦争時に日本軍の捕虜となったクラベル自身の体験を反映しているのだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノボ肥満症経口薬、イーライリリーとの競争で出だし好

ビジネス

11月の機械受注は前月比11%減、2020年4月以

ワールド

ロシア、ドローン生産の大幅増計画 和平に関心なし=

ワールド

米がグリーンランド「侵攻」ならプーチン氏喜ばせる=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中