カレーと中華はなぜ「エスニック」ではないのか?...日本における「エスニック料理」への違和感
日本語で「エスニック料理」といったとき、人が一般的に思い浮かべるのは東南アジアの料理のことだろう。
だが戦前に日本にもたらされ、すっかり日本化した感のあるインド料理(カレー)や中国料理(チャーハンやラーメン)をわざわざ「エスニック料理」といい直す人はいない。
前節で述べた分類に従ってみるならば、それは(D)から(B)を経由して、すでに(A)の領域に移ってしまった食べ物であり、日本人はもはやいかなる他者性もそこに認めようとはしない。カレーやラーメンはすでに日本人の食のアイデンティティを根拠づける料理と化しているのだ。
(A)「われわれ」の文化的伝統のなかで問題なく認知され、いささかも他者性を感じさせないもの。つまり「われわれ」がごく普通の日常生活のなかで受容している食べ物。
(B)「われわれ」の本来の食文化ではなく、その意味で他者ではあるが、それなりに「われわれ」が認知し、口にすることを受け容れるようになった食べ物。あるいはその軽減された他者性の操作を通して、流行の食という地位に一度は就いたような食べ物。
(C)「われわれ」の食文化のなかで受容されてはきたものの、突然に実験的に変容し、従来の枠組みを破って、見知らぬ味の側へと飛び出していったもの。
(D)「われわれ」からはるかに遠い場所にあって文化的にも社会的にも充分認知されてはいるものの、その他者性のあまりの強烈さによって、「われわれ」がそれを食物の範疇として理解することが難しく、しばしば道徳的な非難すら口にしてしまうようなもの。
ではペルシャや中近東、アフリカの料理はどうだろうか。欧米諸国と比べてこうした国々の料理が知られていないのは、簡単な理由からである。
ひとえに日本が帝国主義国家として植民地支配をしてこなかったからだ。逆にいうならば、「エスニック料理」の起源であるといわれる東南アジア諸国とは、かつて大日本帝国が「大東亜共栄圏」の名のもとに軍事的支配を行なった、虚構の共同体に重なり合っている。
だが、料理について職業的に語る者たちがそれを指摘したことは、わたしの知るかぎりほとんどない。
四方田犬彦(よもた・いぬひこ)
1953年、大阪箕面に生まれる。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。長らく明治学院大学教授として映画学を講じ、コロンビア大学、ボローニャ大学、テルアヴィヴ大学、清華大学、中央大学(ソウル)などで客員教授・客員研究員を歴任。
『サレ・エ・ぺぺ 塩と胡椒』
四方田犬彦[著]
工作舎[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
アマゾンに飛びます
2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
-
「セールスコンサルタント」日系/外資TOP企業の人事/経営層を相手に採用戦略を提案/人材サービス「紹介/教育/研修」
株式会社リーディングマーク
- 東京都
- 年収600万円~800万円
- 正社員
-
「セールスコンサルタント」日系/外資TOP企業の人事・経営層を相手に採用戦略を提案/人材サービス「紹介/教育/研修」/業界未経験歓迎
株式会社リーディングマーク
- 東京都
- 年収500万円~700万円
- 正社員
-
未経験OK 外資系有名ブランド企業社内ヘルプデスク業務 京橋駅
株式会社スタッフサービス ITソリューション
- 東京都
- 月給23万5,000円~
- 正社員
-
人事マネージャー候補/外資系大手オンラインメディア企業
株式会社クリーク・アンド・リバー社
- 東京都
- 年収750万円~950万円
- 正社員





