日本独自のコーヒー文化は、喫茶店と缶コーヒーだけじゃない
The Roast(ザ・ロースト) Photo: Panasonic
<世界的潮流を横目に、独自の形態へと進化してきた日本のコーヒー市場。ネスカフェアンバサダーはその最新のものといえるが、そこにパナソニックが家庭向けのこだわりの新サービス「The Roast」を開始する>
【シリーズ】ニッポンの新しいモノづくり
日本人の日常に、すっかり定着した感のあるコーヒー。2016年の国内コーヒー消費は47万トンを超えた。これは5年連続の増加で、もちろん過去最高の数字だ。
あくまでも舶来物だったコーヒーが、国内でここまでの地位を得るに至った理由の1つは、日本流のアレンジにある。中国から輸入した漢字は、仮名も交えて独自の形態へと進化したが、コーヒーでも同様のことが言える。
その象徴的な存在が、喫茶店文化だ。第2次大戦後に日本のコーヒー消費の大半を担った、個人経営の喫茶店。使用する豆から焙煎のレシピ、淹れる機器に供する器まで、店主のこだわりが細部にまで行き渡った喫茶店が全国各地に浸透していった。
「サードウェーブ」の旗手と呼ばれ、2年前に日本にも上陸したアメリカのブルーボトルコーヒーが創業に際して日本の喫茶店を徹底的に分析したのも有名な話。ハンドドリップで1杯ずつ丁寧に淹れる日本の喫茶店文化のエッセンスが、ブルーボトルにも反映されている。
ところで、世界的なコーヒー消費の潮流は、これまで3つの大きな節目で分類されてきた。第1の波=ファーストウェーブは、生産技術の向上と流通の発達により、大量生産&大量消費が進んだ19世紀後半から1960年代までを指す。この時期に、コーヒーは世界的にポピュラーな飲み物としての地位を獲得した。
第2の波=セカンドウェーブは、1960年代以降のシアトル系コーヒーチェーンを中心とする、深入りのコーヒー豆を使ったコーヒーの台頭だ。シアトル系コーヒーチェーンとは、スターバックスやタリーズコーヒー、シアトルズベストコーヒーなど、ワシントン州シアトルに代表されるアメリカ西海岸から発展した店舗群のこと。
浅く焙煎したコーヒー豆を使うアメリカン・コーヒーとは違い、エスプレッソをベースにしたメニューが取り揃えられていた。コーヒーチェーンごとのロゴがついた紙コップを片手に歩くことが、ファッションアイコンともなった時代だ。
そして2000年代以降、潮流となってきたのが第3の波=サードウェーブだ。ブラジルやコロンビア、エチオピアといったコーヒーの生産国単位でのブランディングを超え、生産農家単位で生豆を契約して仕入れたり、上述のように、日本の個人喫茶店では当たり前のように行われていた焙煎や淹れ方までにこだわったスペシャルティコーヒーの時代が訪れている。
そんな世界的潮流を横目に、喫茶店文化と並行しながら日本のコーヒー消費はさらなる独自性を発揮してきた。そのひとつが「缶コーヒー」だ。毎週のように新製品が発売され、自動販売機でも買える国は日本ぐらいのもの。その独自市場を侵攻しているのが、1杯100円から買える「コンビニコーヒー」というのも日本らしいところだ。