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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
渋谷の舞台フェスが面白そう
先日、ミュージカル『蝶々さん』を観に行った。プッチーニのオペラ『マダム・バタフライ』(もともとはアメリカ人が書いた小説)は外国人の偏見と誤解に満ちたもの、だから本当の蝶々さんを紹介しましょうというのが作品のスタンス。蝶々さんこと伊東蝶(演じるのは島田歌穂)と交流のあったアメリカ人宣教師の妻が狂言回しの役で物語が動いていく。セットはいたって簡単なもので、出演者も10人と多くない。ちょっとシンプルすぎると思わなくもなかったが、だからこそ想像力がかき立てられ、役者の一つひとつの動きや歌声がしっかりと心に刻みこまれる舞台だった。
今の時代、DVDやネットなどであらゆる映像やパフォーマンスを見ることができる。それでもやはり生の舞台を見たときの充実感は何ものにもかえがたい。録画された映像ではアラも目立たないが、その分、全体のトーンが平ったくなってしまう。生身の人間が発する声や醸し出す空気、しぐさには、「ここではないどこか」へ私たちを連れて行ってくれる力がある。
随分前のことになるが、高校時代の友人が小劇団で役者をしていた。新宿のタイニイアリスや下北沢の駅前劇場といった小さな空間でどことなく不思議で幻想的な芝居を観ながら、「正直、経済的には大変だよなあ」と思いながら、身体ひとつで何かを表現しようとする人たちに一種の憧憬を感じたりもした。
最近は演劇を観にいく機会も減ってしまったが、これはちょっと面白そうと思ったのが、3月18日(金)~20日(日)に東京・渋谷で開催される「PLAY PARK 2011 ~日本短編舞台フェス~」という演劇祭だ。
これまで大阪や神戸でやってきたフェスを、今回東京で初めて行うことになったという。ダンスから演劇、お笑い、ジャンル分けできないパフォーマンスまで、15分の短編で次々と出演者たちが変わっていくというのがミソ。誰もが名前を聞いたことのあるような大御所から若手まで60組以上も出演するというから(出演者数では日本最大級)、好きなアーティストを見に行くのもいいし、新しい劇団や表現を見つけに行くのもよさそうだ。
先日、実行委員になっている「劇団鹿殺し」の菜月チョビさんたちと話をしたが、もっとファン層を広げたい! と考える演劇人たちが自発的に組織した公演だそうだ。こういう動きは、個人的にとても応援したくなる。
──編集部・大橋希
<3月16日追記>
東日本大震災で被災された皆さまへ心からお見舞いを申し上げます。まだまだ大変な状況が続いていますが、1日も早い復興をお祈りしています。
「PLAY PARK 2011~日本短編舞台フェス~」は震災の影響を鑑み、残念ながら公演中止となったそうです。
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