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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
恋の悩みはジュリエットに相談?
2月14日のバレンタインデー、みなさんはどう過ごされただろうか。毎年恒例だが、街を挙げてロマンチックに盛り上がったのがイタリア北部のベローナだ。
「ベローナ・イン・ラブ」と銘打ち、街の広場には巨大なハートが現れ、街のシンボルであるランベルティの塔は真っ赤にライトアップされ、「アモーレ満載」のイベントやコンサートが開催された。というのもここは『ロミオとジュリエット』の舞台となった「愛の都」だから。地元当局もそのイメージ作りに力を入れているようだ。
ジュリエットのモデルである娘の家(カプレティ家)は一般公開されており、有名なバルコニーやジュリエット像の前は多くの観光客でにぎわっている。この家に世界各国から、毎年5000通ものジュリエット宛ての手紙が届くのをご存知だろうか?
そのほとんどが恋の悩みをつづっているのは予想通りとして、その一通一通に「ジュリエットの秘書」たちが返事を書いている、というのが面白い。イタリア語はもちろん英語やドイツ語、フランス語、スペイン語、日本語などに堪能なボランティアの女性たちが、すべての手紙と電子メールに返答しているという。彼女たちが属しているのは、市の援助を受ける「ジュリエットクラブ」という団体だ。
そして毎年バレンタインデーには、1年間で最も魅力的な手紙に「Dear ジュリエット賞」が与えられる。手紙の中でどれだけ自分の感情を素直に表現したか、ジュリエットにどれほど親愛の情を抱いているかが評価されるそうだ。今年の受賞者は、イタリア人のバレンティーナ・ズィロッチ(19)、イギリス人のサラ・ジョージ(21)、アメリカ人のベス・ギレスピー(28)だった(下写真は受賞者3人と、ジュリエット宛てに届いた手紙)。
「彼と出会ってから、彼のことを思わない時間は1時間もなかった。これっておかしい?」と書くギレスピーは、ニューヨークを離れてスペインで暮らそうかと考えているという。世界を知りたいし、新しい人々とも出会いたい。でもそれをいやがる母を置いてはいけない。私は長女だし......それにあなたも察している通り、ヨーロッパに行きたい大きな理由はイギリスにいる彼に近づけることだから......。
こんな手紙のやり取りを題材にしたのが、5月に日本公開される映画『ジュリエットからの手紙』(下写真)。ベローナを出発点としたクレア(バネッサ・レッドグレーブ)の初恋を探す旅、そしてソフィ(アマンダ・セイフライド)の現在進行形の恋が描かれる。
初恋探しなんて甘ったるい感傷といえなくもないし、結末が読めそうな展開であるのは確か。でも、イタリアの美しい景色と物語の軽快なテンポは心地よく、初夏の風のようにさわやかな作品だ。ソフィ役のセイフライドも、彼女に反発しながら引かれていくチャーリー役のクリストファー・イーガンも日本ではまだそれほど知名度が高くない。だからこそこの作品にはぴったり。
かつて真実の愛と感じた愛なら、遅すぎることはありません――劇中、ソフィがジュリエットの秘書となってクレアに書いた手紙の言葉に素直にうなずけるのは、レッドグレーブのチャーミングさゆえか。
ところで映画の冒頭、ジュリエット像の右胸に触れて写真を取る観光客の男性を見て「なんだ、あのエロオヤジは?」と思った――が、胸に触ると幸せになるとか、恋が成就するとかいう言い伝えがあるそうだ。
恋に悩めるみなさんもジュリエットにアドバイスを求めてみては?
――編集部・大橋希
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