コラム

追いつめられたウィキリークス

2010年12月03日(金)19時20分

 アメリカ政府の外交公電25万1287通の公開を11月28日に開始したウィキリークス。直後からサイバー攻撃を受けて断続的にアクセスができなくなったり、米議会の働きかけで、サーバー機能を提供していたアメリカの「アマゾン・コム」がウィキリークスへのサービスを停止、さらに「大量」のサイバー攻撃を受けていることを理由にドメインを提供していた事業者「EveryDNS.net」もサービスを停止した。ウィキリークスはスイスにサイトを移動させ、IPアドレスでアクセスできるようにしている。

 ウィキリークス側も、3日の午後にドメインが消失したことを伝えるツイートを行なった。創設者のジュリアン・アサンジは今、イギリスに滞在しているとみられている。ウィキリークス側は、アサンジが暗殺される恐れがあるとして、行方は明らかにされるべきではないと言う。暗殺の脅迫も受けているようだ。だがスウェーデンとインタポール(国際刑事警察機構)から強姦容疑で逮捕状を出されているアサンジは、報じられているところでは、ロンドン警視庁によって数日以内に逮捕されるとみられている。

 当のアメリカでは、アサンジをスパイ容疑で逮捕すべきだとの声も上がっている。ダイアン・ファインスタイン上院議員は、ウィキリークスによる暴露が「この国の業務する能力を奪う」と指摘。またウィキリークスをテロ組織に指定すべきだと主張する議員や、これまでのインターネットを管理するよう主張し続けてきたジョー・リーバーマン上院議員は、諜報活動などの情報源を公表することを連邦犯罪にする法案を2日に提出した。もともとそうした情報を漏洩することは犯罪だが公表する者も取り締まろうというのだ。

 全ファイルを事前入手しているメディア数社が次々と情報を出している上に、アサンジが拘束される可能性もある。騒ぎはまだしばらく収まりそうにない。

――編集部・山田敏弘

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story