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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
ゲイの若者たちをつなげ!
アメリカで若い同性愛者がいじめを理由に自殺する事件が相次ぎ、大きな波紋を呼んでいる。
ニュージャージー州立ラトガース大学1年生のタイラー・クレメンティが、ニューヨークとニュージャージーを結ぶジョージ・ワシントン橋から飛び降りたのは9月22日。自室で恋人の男性とセックスしているところをルームメイトに盗撮され、その映像をインターネットに投稿された直後のことだった。加害者の学生2人は、プライバシー侵害容疑で逮捕された。
同じ週にはカリフォルニア州の男子学生(13)、テキサス州の男子学生(15)がやはり同性愛者であることを理由にいじめられ、自殺する事件も起きた。
これらの事件を受けて、多くの有名人がゲイの若者を支援する活動に協力し始めている。
先週、リズ・クレイボーン社のチーフ・クリエイティブ・オフィサーで、デザイナー発掘番組『プロジェクト・ランウェイ』のホストを務めるティム・ガン(57)はメッセージビデオを発表。ゲイであることを理由にいじめを受け、100錠以上の薬を飲んで自殺を図った過去を明かしながら、若者たちへの応援メッセージを送った。「ひどく絶望した17歳の私は自殺を試みた。それが成功しなかったことを今はとても嬉しく思う。でもその時は、そうすることしか考えられなかった。......でも、あなたは1人じゃない。状況は必ずよくなる」
このビデオは、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)の若者の支援を目指す非営利団体「トレバー・プロジェクト」の活動の一環で作られたもの。同性愛者の兄を持つ女優アン・ハサウェイや、人気ドラマ『Glee グリー』でゲイの高校生を演じるクリス・コルファー(私生活でもゲイを公表)ら多くの有名人も協力している。
このほかにもコメディアンのエレン・デジェネレスがトーク番組でクレメンティ事件に対するコメントを発表したり、『Glee グリー』のプロデューサーが10代の同性愛者の悩みを描いたエピソードを制作すると発表したりしている。
いじめの問題が深刻なのはどこの国でも変わりはない。LGBTの子供たちにとっては特にそうだ。ある調査によれば、LGBTの子供はそうでない子供よりもいじめ被害率がかなり高く、鬱病になったり自殺したりする率もずっと高い。
ちなみにクレメンティの事件が大きく取り上げられると、同性愛バッシングだ、ヘイトクライム(憎悪犯罪)だと非難する声も上がった。しかし加害者にそこまでの意識はなく、軽いおふざけのつもりでやった可能性が高い気がする。インターネット上でプライバシーを暴露する「いじめ」が、旧来のいじめ以上に大きな衝撃を与えてしまった結果ではないかと思う。
何はともあれ、異性愛が当然という文化の中で、自分がLGBTであることを誰にも話せず、1人で悩んでいる子供たちはどんなに辛いだろう。トレバー・プロジェクトでも呼び掛けているが、何より大切なのは彼らを孤立させないこと。相談する場所がある、悩みを話せる相手がいることがわかれば絶望的な状況から一歩踏み出せる。
ひるがえって日本でもNPO法人アカー(OCCUR)など、LGBTのネットワーク作りや差別解消活動を続けている団体はある。同じくNPO法人のピアフレンズは10、20代のゲイの友達作りイベントを主眼とした団体。仲間同士を「つなげていく」ことの大切さを主催者側は実感しているようだ(しかし同性愛がらみの大きな問題が起きたとしても、日本の有名人がゲイ団体のための宣伝を買って出るという状況はどうにも考えづらいが......)。
ネットを使って他人と「つながる」ことが簡単になり、LGBTの人たちも昔よりは仲間を見つけやすくなったという話は聞く。それでも実際に会って、面と向かって話をすることの安心感はサイバー空間でのつながりには代えられない。そういう意味で、もっと彼らをつなげていく活動が盛んになったらいいなと思う。
――編集部・大橋希
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