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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
アフガンへ「日本国民からの贈り物」
最近はアフガニスタンでの戦いがドツボにはまっているというニュースが溢れ、そろそろ耳タコ状態になりつつある。日本にいると、アフガニスタンは一見「遠い存在」だ。途方もない距離を感じながら読んでいると、正直「またか」という感想で終わってしまいそうになる。
でも実際には、アフガニスタンの情勢は日本にとってひとごとではない。7月20日にアフガニスタンで開かれた支援国会議では、岡田外相が2010年末までに約11億ドル(約955億円)相当の支援を約束した。日本によるアフガニスタン支援は、09年から5年間で最大50億ドル(約4350億円)規模となる予定。下世話な言い方をすれば、日本とアフガニスタンは少なくとも「4350億円分の関係」はあるだろう。
4350億円といえば、大問題になった八ッ場ダム(群馬県)の事業費4600億円とそう変わらない。これだけの税金が使われながら、日本にいるとアフガニスタンがやっぱり遠いのは何故だろう。アフガニスタンでも、日本は「見えない存在」なのだろうか。もし見えないのなら、インド洋での給油活動の代わりに4350億円支援を決めたとき、米識者が言った「日本がまた(人的貢献をしないでカネだけ出す)世界のATMに戻る」という一言も一理あるかもしれない。
そこで、国連世界食糧計画(WFP)アジア地域局長としてアフガニスタンを含むアジア14カ国の支援を統括している、忍足謙朗(54)さんに聞いてみた――アフガニスタンの人たちにとって、日本からの支援は見える存在なのだろうか。
忍足さんによると、少なくとも「食糧」という形の支援については「はっきり見えるし、触れられる」のだそう。WFPというのは、世界中で食べる物に困っている人に食糧支援活動を行う国連機関。日本は今年、WFPを通してアフガニスタンに51億2000万円を拠出している。
配給する食糧の袋にはすべて、「日本政府」からではなく『GIFT FROM THE PEOPLE OF JAPAN(日本国民からの贈り物)』と書かれている。だから、「日本の人たちからだとはっきりわかる。それが学校給食から各家庭の台所にも、何十万トンと入っていく」と忍足さんは言う。
たとえば、アフガニスタンだとこんな感じ。
(C)WFP/Mike Huggins
そのほか、日本からの援助はこんなところにも。
イラン (C)WFP/Brian Gray
パレスチナ自治区ガザ (C)WFP/Ayman Shublaq
ケニア (C)WFP/Gabriel Baptista
ジンバブエ (C)WFP/Richard Lee
スーダン (C)WFP/Boris Heger
フィリピン (C)WFP/Amy Horton
ミャンマー(ビルマ)(C)WFP/Than Tin Lily
上に挙げた国(地域)は、ニューズウィークでもよく取り上げている。「日本国民からの贈り物」が元は税金だったことを考えると、納税者である私たちはこうした国と無関係ではないだろう。ニュースになっている国とのつながりを「税金」という形で考えるのも、読む際の距離感を縮める1つの手かもしれない。ちなみに日本は今年、WFPを通じて15カ国へ113億円規模の食糧支援を決定している。
日本が「世界のATM」だとして、ATMから引き出されたキャッシュが食糧に様変わりするのなら、アフガニスタンの人にとっては給油とどちらが嬉しいだろうか。忍足さんは支援の形は物資でも嬉しいとしながらも、「キャッシュの方が物資を現地で調達できるなど融通が利き、輸送時間も短いし、好ましい」と率直に語っていた。効率が良くて質の高い援助ができているのかをモニタリングするのも、WFPの仕事だという。
とはいえ、アフガニスタン支援のための日本からの拠出金で、WFPへの拠出が占める割合は一部に過ぎない。見えない部分が、まだまだたくさんあるともいえるだろう。国際援助を事業仕分けすると「ムダ」ばかり注目されがち(報道されがち)なので支援の実態は伝わりにくいかもしれないが、自分たちの税金が具体的にどう生かされているのか、生かされていないのかは、それが海外だろうと気になるところだ。
――編集部・小暮聡子
忍足謙朗(おしだり・けんろう)さんは、WFPの最高幹部で数少ない日本人の幹部級国連職員の1人。 09年9月にアジア地域局長に就任する前は、WFP駐スーダン代表として(ダルフール紛争などを抱える)スーダンでWFP全職員の4分の1にあたる2500人を率いていた。現在はバンコク在住(7月28日、青山の国連大学にて)
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