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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
北朝鮮の麻薬・ニセ札疑惑は「シロ」か
偽造紙幣の製造や武器・麻薬の密売などの違法な手段で外貨獲得にいそしんでいるダークな国家──北朝鮮について、こんなイメージをもっている人は多いだろう。3月1日に公表された米国務省の2010年版「国際麻薬統制戦略報告」の中でも、北朝鮮の麻薬・ニセたばこ取引や偽造紙幣とのかかわりが取り上げられている。
ただし、この報告書は北朝鮮当局が国家ぐるみで違法行為に手を染めているとは断定していない。「北朝鮮の領土を介して偽造たばこの密輸やニセ札の流通などの違法活動が行われ続けている」と指摘するに留めている。微妙な表現には二つの理由がある。一つは、報告書が指摘しているように、北朝鮮当局の関与が立証できないことにある。
もう一つの理由は、こうした違法行為が実は外国人によって行われている可能性があるからだ。北朝鮮問題に詳しい元米外交官によると、北朝鮮産のアヘンが密売されているのは事実だが、実際に密売しているのはハバロフスクやウラジオストクから訪れるロシア人で、北朝鮮の人間はかかわっていないという(北朝鮮国内でアヘンは製造されているが、主に医療目的に使用されているらしい)。
「スーパーノート」と呼ばれる米ドルの偽造紙幣も同じだ。かつては北朝鮮当局がニセ札を製造したと指摘されてきたが、近年では関与が確認されていない。先の元外交官によると、最近のスーパーノートは中国の元人民解放軍幹部らが北京で製造し、マカオのカジノや中朝間の国境貿易などを経由して北朝鮮国内に入り、流通しているものが多いという。
偽造たばこについても、報告書は「(北朝鮮北東部の)羅津経済貿易地帯で大規模な密売取引が行われ続けている」としているが、「北朝鮮当局が(偽造たばこの密売に)どれだけ加担しているかは不明だが、報告の多さからして密売を認識している可能性は高い」と述べるに留めている(ちなみに、この元外交官によると北朝鮮の偽造たばこは「禁煙したくなるほどまずい」らしい)。
もちろん、これで北朝鮮が完全に「シロ」というわけではない。日本の政権与党の某幹事長の政治資金疑惑のように......。
──編集部・横田 孝
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