コラム

イングランド代表はロシアW杯をボイコットするか──元スパイ襲撃事件の余波

2018年04月10日(火)19時40分

ボイコットに効果はあるか

ただし、ボイコットには3つのリスクが付きまといます。第一に「効果があがらない」可能性です。

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ロシア外交官を国外退去させた国は、ロシア大会出場国の約3分の1を占めます。これらが全てボイコットした場合、グループCをペルーが不戦勝で勝ち抜けることになるなど、大会の盛り上がりという意味でロシアのダメージは免れません。

ただし、モスクワ五輪と比べて、そのダメージは限定的とみられます。

競技数が多い五輪は、国力がより反映されやすくなります。1980年当時、ソ連など一部を除くとスポーツ大国の多くは西側にあり、これらが揃ってボイコットしたことは大きなインパクトとなりました。

一方、W杯の場合、ラテンアメリカやアフリカにも強豪国はあり、それらはボイコットを考えていません。また、1980年当時の五輪と異なり、W杯はビッグビジネス。TV中継も予定通り世界中に配信されます。

つまり、仮にヨーロッパの強豪が揃って出場しなければ、その影響は小さくないものの、それなりに大会は成立するとみられるのです。しかもそれが西側でも放送されれば、気まぐれな世論が「なぜボイコットした」と一気に自国政府への批判に転じることもあり得ます。

他の国がつき合ってくれるか

これに対しては、「世界の強豪国にはやっぱりヨーロッパが多く、これが結束すればロシア大会は失敗する」という強気の反論もあり得るでしょう。実際、FIFAランキング上位30ヵ国中、ロシア外交官に国外退去を命じた国は13ヵ国で、このうちヨーロッパの10ヵ国がW杯ロシア大会の本番に出場権を得ています。

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しかし、これが第二の点ですが、多くの出場国が英国に同調してボイコットするかは大いに疑問です。

英国政界からは「英国がボイコットすれば同盟国もこれにつき合うべき」という論調が聞かれ、ボイコットの議論はオーストラリアでも生まれています。

しかし、ロシア外交官に国外退去を命じているその他の出場国では、ボイコットの気運までは高まっていません。

もともとヨーロッパの大国フランスとドイツは、米英と同盟関係にあっても、これらと常に歩調を揃えてきたわけではありません。両国とも米英による2003年のイラク侵攻には協力せず、2014年のクリミア危機後は強硬路線の米英と対照的にロシアとウクライナの調停を試みました。英国がEUからの離脱交渉に入っていることもあり、ヨーロッパ諸国が全面的に英国に協力することは考えにくいのです。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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