コラム

「謝らない謝罪」が日本で蔓延している

2021年07月28日(水)17時20分

5月、外国人労働者が働く農家に対して「外国人と一緒に食事をしないように」などと記した文書を配布した茨城県の保健所のコメント。

「差別する意図は全くありませんでしたが、誤解を招く表現があったとしたら申し訳ありませんでした」

3月、自分の目の前で国会答弁に立つ総務省幹部に、「記憶がないと言え」と発言したことについての武田良太総務大臣の釈明。

「誤解を与えたのであれば申し訳ない」

2月、辞任表明の際の森元会長の恨み節。

「まあこれは解釈の仕方だと思うんですけれども(中略)私は当時そういうものを言ったわけじゃないんだが、多少意図的な報道があったんだろうと思いますけれども」

昨年12月、政府が「会食は少人数に」と呼び掛けている最中に、自民党の二階俊博幹事長らと8人程度で会食をしていた菅義偉首相の弁明。

「国民の誤解を招くという意味において、真摯に反省している」

文字数の制限が来たのでここでやめる。受け手側の「誤解」を引き合いに出して自分を守るのは謝罪ではない。意図にかかわらず、自分がしたことの責任を真っすぐ認めることが謝罪の根幹を成す。

「謝らない謝罪」は責任も信頼も言葉も壊す。もう、終わりにしよう。

<本誌8月3日号掲載>

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プロフィール

望月優大

ライター。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本──「移民国家」の建前と現実』 。移民・外国人に関してなど社会的なテーマを中心に発信を継続。非営利団体などへのアドバイザリーも行っている。

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