コラム

退職者が続出する企業には「セルフ・キャリアドック」が必要だ

2019年01月11日(金)15時25分

キャリアアドバイザーとは違う「キャリアコンサルタント」

ここで、そもそも「キャリアコンサルタント」とは何かについて解説しておく必要があるだろう。先ほど「プロのキャリアコンサルタント」とも書いたが、キャリアコンサルタントは、名称独占の国家資格だ。筆者もその有資格者である。

人材業界や大学には、キャリアアドバイザーと呼ばれ、就職や転職を支援する人がいる。しかし、自分の経験や偏った知識に基づいたアドバイスしかできず、相手を混乱させ、未来への適切な意思決定を阻害してしまうケースもある。

キャリアの相談に乗る、それは人の一生に影響を与える責任の重い仕事にもかかわらず、面談の質には大きなバラつきがあるのだ。

しかし、若年層の就業意識を高め、自立できるようにする必要性や、職業寿命が延びるなか、高齢になっても活躍し続けられるようにする必要性など、各自がキャリア意識を持っていきいきと働ける社会の実現が求められる時代になった。いま、キャリア支援者の役割はますます大きなものになっている。

この時代背景の中、厚労省は2016年4月より、キャリア支援の品質を一定以上にするためにキャリアコンサルタントを国家資格化し、登録制とした。現在、国家資格キャリアコンサルタントは3万9011人いる(2018年11月時点)。

キャリアコンサルタントよりも上の国家資格がある

日本におけるキャリア支援者の資格化の歴史は、2000年代初頭から始まった。最初は、米国のキャリアカウンセラー養成プログラムを参考にした民間資格だ。

GCDF(Global Career Development Facilitator)やCDA(Career Development Adviser)などの資格がそれにあたる。これらは、国家資格化以降も並列する形で存在している(これらの民間資格はやがて標準レベルと定義された)。

その後、厚労省が標準レベルより高い技能を認定するための制度を導入した。国家検定として2008年から「2級キャリアコンサルティング技能士」、2011年から「1級キャリアコンサルティング技能士」が始まったのだ。2級は年に2度、1級は年に1度試験が行われている。

そして、ついに厚労省は、前述のとおり2016年4月から、たとえ標準レベルであっても、キャリアコンサルタントの名称を使うには、全員が国家資格を取得し登録しなければならないようにしたのである。

標準レベルである国家資格キャリアコンサルタントよりも上位の資格である「2級キャリアコンサルティング技能士」は、熟練レベルと言われていて、受験資格は細かく複数あるが、多くの人に分かりやすい基準で言うと「5年以上の実務経験を有する者」だ。

試験には学科試験と実技試験があり、それぞれに合格しなければならない。特に実技は難しく、合格率は15.47%(直近の2018年前期試験)。学科、実技の両方に合格した累計人数は現在8879人である。熟練レベルは、有資格者の4~5人に1人しかいない。

一方、「1級キャリアコンサルティング技能士」は、指導レベルと言われており、キャリアコンサルタントの指導・育成をする役割だ。分かりやすい基準で言うと、受験資格は「10年以上の実務経験を有する者」。

その大ベテランが受けても、学科は29.14%、実技は5.52%(直近の2017年実績)の合格率という厳しさである。学科、実技の両方に合格した累計人数は、制度導入から7年以上を経ても、まだ341人に過ぎない(筆者もその1人だ)。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、スペインは「国際法順守」 ホルムズ海峡巡る

ワールド

欧州各国とカナダの防衛費、25年に20%増=NAT

ワールド

イスラエル、革命防衛隊のタングシリ海軍司令官を殺害

ワールド

マレーシア首相、イラン・エジプト首脳らと会談 ホル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 4
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 5
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 6
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 7
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 8
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 9
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 10
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story