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イスラエルはいかにして世界屈指の技術大国になったか
【法】マネジメント体制とエコシステム構築
「法」とは、法律制度のみならず、広く国家としてのマネジメント体制、国家構造、産業やスタートアップを生み出すエコシステムなどが含まれる。現代の経営学で端的に言えば、「将」がリーダーシップで「法」がマネジメントであり、戦略である「道」を実行する車の両輪が「リーダーシップ×マネジメント」となるのだ。
イスラエルが近年「技術大国」と言われるようになったことには、ハイテク技術に優れた国づくりをするというグランドデザインを描くとともに、実際に、国のマネジメント体制としてハイテク技術における国家構造やエコシステムを構築したことが要因として指摘される。
イスラエルには、グーグル、アップル、マイクロソフト、インテルなど世界トップレベルのグローバル企業が多数進出してR&D拠点を設けている。また同国は「スタートアップ大国」、「第2のシリコンバレー」とも呼ばれ、スタートアップのエコシステムも構築している。
ここで言うエコシステムとは、起業したスタートアップのビジネスが成長していくために必要なインフラやプレイヤーが揃っている仕組みのことである。
政府機関、大学、研究機関、自治体、民間企業、投資家などのプレイヤー。各種のR&D施設、政府の支援、インキュベーター、経験豊富で支援的なベンチャーコミュニティー、スタートアップに有利な税務・法務制度などのインフラ。個々の起業家がどれほど優れたイノベーションをもっていたとしても、スタートアップのビジネスを継続して成長へと導くためにはエコシステムが形成されていることが不可欠なのだ。
実際に米国のコンサルティング&リサーチ会社であるCompassの2015年調査においては、スタートアップのエコシステム世界ランキングにおいてイスラエルのテルアビブが世界第5位にランクされている。1位から4位はすべて米国の都市(シリコンバレー、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン)であり、米国以外の都市ではトップという評価を得ているのだ。
道・天・地・将・法の総合評価
イスラエルの国家としての競争戦略は、道・天・地・将・法の5項目から分析してみると極めて合理性や整合性の高いものであると評価される。軍事や教育といったマクロレベルの施策を上手にミクロ経済レベルの繁栄にも結びつけている。
図表2は、図表1のフレームワークを使ってイスラエルの競争戦略を分析したものである。ハイテク技術に優れた国づくりという国家戦略は、「天の時×地の利」に合致した合理性の高いものである。また「将」と「法」が車の両輪のような関係で国家戦略を実行する「リーダーシップ×マネジメント」となって機能している。
戦略目標が明確で、目標達成に直結する戦略を計画的に長期にわたって実行してきたことがイスラエルの競争戦略の総括と言えるだろう。
なお、孫子の兵法には、この五事に限らず、様々な点において5という数字が登場し、中国古来からの五行思想が色濃く反映されている。また、孫子は様々な点において5つのポイントを指摘するだけではなく、そのなかでの優先順位や関係性にも強くこだわっていた。
自然哲学の考え方でもある五行思想とは、5つの要因が互いに影響し合って効果を高めていくというものであるが、イスラエルの国家運営にもその効果が感じられると言えよう。
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