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「夜間の犯罪は明るくすることで防げる」は本当か? 街灯の防犯効果について考える
「犯罪者」と言うと、とかく暗がりに潜んでいる姿を想像しがちだが、そうした場所は犯罪者でも気味が悪いに違いない。犯罪者も同じ人間。明るい場所で安心し、暗い場所で不安になる。つまり、犯罪者の明暗に対する反応も、基本的には普通の人と同じなのである。
こうした知識を踏まえて、街灯の防犯効果について考えてみる。
犯人の動機ではなく、犯罪が起きる場所に注目する「犯罪機会論」では、犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」であることが、すでに分かっている。
例えば、両側に住宅の窓がたくさん見える道では、何となく視線を感じるので、犯罪を諦めざるを得ない。逆に両側に高い塀が続く道では、犯行を目撃されそうにないので、安心して犯罪を始められる。
では、街灯を設置すれば、「見えやすい場所」になるのだろうか。
そもそも、街灯の機能は「夜の景色」を「昼の景色」にできるだけ戻すことである。とすれば、昼間安全な場所(つまり、視線を感じられる場所)に街灯を設置すれば、夜でも安全な景色に戻って危険性が抑えられるはずだ。しかし、昼間危険な場所(視線を感じられない場所)に街灯を設置しても、戻った景色は危険なままなので安全性が高まることはない。
要するに、昼間安全な場所に街灯を設置すれば、夜でも安全な場所になるが、昼間危険な場所に街灯を設置しても、夜だけ安全な場所にはならないのである。
こうした知識が共有されていないため、記事の冒頭で触れたように、三重県の中学生が殺害された事件では、現場付近に街灯が増設された。ところが、そこには家がほとんどない。したがって、この街灯には、残念ながら、無人島の外灯のように防犯効果を期待できない。
間接的には効果も?
さらに、この場合、街灯によって安全な場所になったと勘違いしてしまい、それまでは暗かったので警戒していた人も油断するかもしれない。それでは、かえって犯罪が起きやすくなってしまう。実際、街灯を設置した途端に、ひったくりが多発した造成地もある。
シンシナティ大学のジョン・エック教授も、「照明は、ある場所では効果があるが、他の場所では効果がなく、さらに他の状況では逆効果を招く」と述べている。
結局、街灯の防犯効果は昼間の状況次第ということになる。そのため、「地域安全マップづくり」も昼間に行うだけで十分である。犯罪が起きる確率の評価は、昼の景色が基準になるからだ。
ただし、昼間危険な場所に街灯を設置した場合でも、住民に安心感を与えて地域が活性化されれば、昼の景色自体を安全な景色に改善する動きが起こるかもしれない。もっとも、これは街灯の直接的な効果ではなく、間接的な効果ではあるが。
街灯の防犯効果に関する研究結果を収集して評価したノースイースタン大学のブランドン・ウェルシュ教授とケンブリッジ大学のデイビッド・ファリントン教授も、これまでの研究には防犯効果を肯定したものと否定したものが混在するものの、肯定した事例においては、街灯の改善が地域への関心を高め、それが環境改善の触媒となり、犯罪を減少させたと分析している。
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