コラム

津田梅子、下田歌子、安井てつが開いた日本の「女子教育」...明治から現在で、どこまで進んだか

2024年08月06日(火)18時45分
日本の女子教育の草分け津田梅子、下田歌子、安井てつ

beauty-box/Shutterstock

<津田梅子、下田歌子、安井てつの3人が草分けとなった日本における女子教育だが、現在でも日本の状況は諸外国に後れを取っている>

[ロンドン発]英ケンブリッジ大学の女子教員養成校(現ヒューズ・ホール)の校長を務めたエリザベス・フィリップス・ヒュース(1851~1925年)は日本女子教育の発展に努めた1人。新しい5000円札の顔になる津田梅子、下田歌子、安井てつはヒューズ・ホールと縁がある。

津田梅子は津田塾大学、下田歌子は実践女子学園、安井てつは東京女子大学を開いた日本女子教育の草分け。そのヒューズ・ホールで7月29日、ローリー・ブリストウ校長と実践女子学園の木島葉子理事長の間で交流協定が交わされた。下田歌子の視察から実に約130年だ。

newsweekjp_20240806084809.jpg

交流協定を交わす木島理事長とブリストウ校長(筆者撮影)

調印式はユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科研究所の大沼信一教授を中心に2015年に始まった毎年恒例のジャパン・ユース・チャレンジの中で行われた。10周年の今年は7月27日~8月4日の日程で日英から実践女子学園を含む高校生計100人が参加した。

newsweekjp_20240806084839.jpg

UCLジャパン・ユース・チャレンジに参加した日英の高校生(同)

ビクトリア女王に謁見した下田歌子

木島理事長も実践女子大学の卒業生。男女雇用機会均等法が施行された1986年に外資系の生命保険会社に入社。「四大卒かつ浪人経験もある自分に就職試験を受けさせてくれる企業は数少なかった」と日経ウーマノミクスプロジェクトのインタビューに振り返っている。

newsweekjp_20240806084902.jpg

木島理事長(同)

木島理事長は「今年、実践女子大学は国際学部を立ち上げてグローバルと社会連携を軸にやっている。下田先生が100年以上前に訪れたご縁で交流協定が結ばれた。言葉や経済的な問題などハードルは高いものの、これから交換留学など具体的な内容を相談する」と意気込む。

下田歌子は明治天皇の皇女ご教育係の内命を受け、欧州8カ国と米国を視察した。英国ではバッキンガム宮殿でビクトリア女王に謁見。この時、日本古来の礼装「袿袴(けいこ)」を着用して女王や英国の上流社会に感銘を与えた。

「女性が社会を変える、世界を変える」

実践女子学園の建学の精神は「女性が社会を変える、世界を変える」。下田は米国の詩人、ウィリアム・ロス・ウォレス(1819~81年)の言葉を引いて「揺籃(ようらん)を揺るがすの手は、もってよく天下を動かすことをうべし」と学校設立の意義や自らの志を世に問うた。

「揺りかご」をゆらす手とは女性を指し、女性こそが天下を動かせるという意志が込められている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独VW、中国合弁工場閉鎖へ 生産すでに停止=独紙

ビジネス

ECB、ディスインフレ傾向強まれば金融緩和継続を=

ワールド

米中外相がマレーシアで会談、対面での初協議

ワールド

米政府、大規模人員削減加速へ 最高裁の判断受け=関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story