コラム

ウクライナ侵攻、もう1つの「厄災」...アフリカ「資源争奪戦」の欺瞞に満ちた実態

2022年11月15日(火)17時03分

221115kmr_fcl08.jpg

「アフリカにガス開発は必要ない」と連呼するアフリカの環境保護活動家(15日、筆者撮影)

ロシアによるウクライナ侵攻はさらなる地政学的な問題を引き起こし、欧州連合(EU)やその他の国々はますますガスを求めてアフリカに殺到している。「アフリカの発展のためにはガスが重要であるという物語がありますが、それが完全に誤りであることはすでに白日のもとにさらされています」

EUがやって来て「アフリカよ、あなたたちのガスが必要だ。もっと欧州にガスを送って下さい」と要求する。「米国やEUがアフリカの大地にゴールドラッシュならぬガスラッシュを起こそうとしています。しかし、それはアフリカのコミュニティーのためになりません。私たちはそれにノーと言うためCOP27にいるのです」とバトナガルさんは言う。

UAEは1070人の代表団、うち70人が化石燃料ロビイスト

冷戦期、米国は欧州の同盟国が旧ソ連のエネルギーに依存するのを避けるため、中東の油田を供給源にするのを認めるように振る舞った。しかし1956年のスエズ危機で、米国は英仏が原油を確保するため帝国主義時代のように軍事力を行使するのを許さなかった。これを機に欧州は旧ソ連へのエネルギー依存を深めていく皮肉な結果となった。

国際環境NGO「グローバル・ウィットネス」によると、COP27の交渉にはシェルやBPなどエネルギー大手傘下の化石燃料ロビイスト636人が登録されていたという。昨年のCOP26から25%以上も増え、化石燃料産業の影響力が拡大していることを示している。

COP26に176人を派遣したアラブ首長国連邦(UAE)は来年のCOP28で議長国を務めるため今回1070人の代表団を登録。このうち70人が化石燃料ロビイストだった。合計29カ国が自国の代表団に化石燃料ロビイストを加えており、ロシアは150人の代表団のうち33人が化石燃料ロビイストで、UAEに次いで多かった。

その一方で、気候変動の影響を不当に受ける「南半球」の活動家、先住民族、その他の住民は高い渡航・宿泊費用、ビザの問題、開催国による抑圧的な行動によって事実上、COP27から締め出されている。「化石燃料産業のロビイストがCOP27に多く参加することは人類と地球の両方を犠牲にする歪んだジョークだ」とグローバル・ウィットネスは批判する。

221115kmr_fcl06.jpg

COP27 でのUAE パビリオン(筆者撮影)

脱炭素化の日、化石燃料のイベントばかり

バトナガルさんは「汚染者の彼らが気候変動の交渉の場にいます。気候変動の影響を受けている人々は来られなかったのに、汚染者たちがここですべての決定に影響を及ぼしているのです。脱炭素化の日(11日)も石油やガスなど化石燃料のイベントばかりが開催されました。これは本当に問題です。気候正義のコミュニティーとして非難します」と語気を強めた。

221115kmr_fcl02.png

(出所)報告書「日本の汚い秘密」より抜粋

国際環境団体オイル・チェンジ・インターナショナルの報告書「日本の汚い秘密」は(1)日本は化石燃料事業に対する世界最大の公的支援国であり、19~21年に年平均106億ドル(約1兆4700億円)を提供(2)日本は世界最大のガス事業支援国でもあり、平均で年間67億ドル(約9300億円)を投じている――と指摘している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射と日韓が発表、前日に続き

ワールド

米イラン合意、日本政府・与党は楽観視せず 「攻撃再

ワールド

豪中首脳が電話会談、地域のエネルギー安保巡り協力強

ビジネス

インド中銀、政策金利据え置き イラン戦争で経済見通
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story