コラム

30歳未満、特に女性はアストラゼネカ製ワクチン接種には細心の注意を 血栓症・血小板減少のリスク

2021年04月08日(木)14時04分

女性の場合、避妊のためピルを服用していると、わずかだが血栓症のリスクが高まる。妊娠中・出産後はさらに血栓症になるリスクが高いため、AZワクチンでなくても、接種の際には細心の注意が必要だ。

筆者は、ファイザー製ワクチンを接種する際のスクリーニングで「血液凝固障害か、ワルファリンのような抗凝固剤を服用しているか、筋肉内注射に対する禁忌(普通は適切な療法だが、それが当てはまらない人)があるか」を質問していることが、果たして注射部位に留まる問題なのかずっと気になっていた。

昨年12月、米フロリダ州マイアミ・ビーチの産婦人科医グレゴリー・マイケルさん(当時56歳)が米ファイザー製ワクチンを接種後、副反応で急性免疫性血小板減少症(ITP)を起こし、血小板不足から出血性脳卒中を起こし、息を引き取った。接種者の体質によってはワクチン接種で凝固障害がブーストされることがあるのではないかと不安を覚えた。

AZワクチン接種後に血栓症・血小板減少の同時発生で急死したイギリス国内の19人に関する詳しい状況はまだ分からない。体質や接種時の状況によって血栓が急激に発生し、血小板が足りなくなって出血が止まらず、死んでしまうケースが発生しているとの懸念は払拭されていない。

ワクチン接種による「集団免疫」獲得を目指す戦略は「最大多数の最大幸福」を実現させるものとは言え、そのために犠牲になる人が出ることは、これまで予防接種禍や薬害事件を取材してきた筆者としてはいたたまれない気持ちになる。遺族は最愛の人の急死に悲しさとやりきれなさでいっぱいだろう。

ただ、救いは利害相反を避けるため、MHRAもJCVIも英保健省とは独立して判断し、EMAとも足並みをそろえていることだ。

100%安全とは言い切れないワクチンの接種、しかもパンデミック下における前例のない地球規模の集団予防接種ではこれからも何が起きるか分からない。私たちが日常を取り戻すためには臨床試験や接種によるデータと分析を積み重ねて、手探りで一歩後退二歩前進を続けていくしか道がない。

AZワクチン接種後4日から2週間以内に以下の症状がある場合、直ちに医師の診察を受けるようとMHRAやEMAは呼びかけている。

・呼吸困難

・胸の痛み

・足のむくみ

・持続的な腹痛(腹痛)

・重度で持続的な頭痛やかすみ目などの症状

・注射部位以外の小さな血斑

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story