コラム

新型コロナ「不都合な真実」をあなたは受け入れられるか

2020年03月17日(火)13時10分

前回の記者会見では削減率は次のように説明された。それでも相当な数の高齢者らが亡くなることは明白だ。

(1)熱や咳の症状がある人は1週間、自宅隔離→ピークを20~25%削減
(2)症状がある人の家族全員が14日間自宅に留まる自宅検疫→ピークを25%削減
(3)新型コロナウイルスに脆弱な高齢者をケア→死亡率を20~30%削減

日本ほどではないにせよ、英国でも高齢化が進んでおり、5人に1人が65歳以上。シルバーデモクラシーは欧州連合(EU)離脱でも大きな原動力となっており、集団免疫獲得を目指すというのは高齢者を見捨てることかという反発を招いても何の不思議もない。

3つのコロナ関連死

クリス・ホウィッティ主席医務官は記者会見で3つの死を考える必要があると問いかけた。新型コロナウイルス肺炎による直接的な死、ICUや人工呼吸器などNHSの医療資源が枯渇することによる間接的な死、隔離など公衆衛生的介入による負の影響──だ。

インペリアル・カレッジ・ロンドンMRCセンターは世界中に広がった批判に応えるため、英国や他の国の政策のもとになっている感染症数理モデルを公開した。

(1)症例の自宅隔離。咳または発熱がある人は7日間自宅に留まる
(2)自宅検疫。症状がある人の家族全員が14日間自宅に留まる
(3)社会的距離。世帯・学校・職場の外で接触を4分の3減らす
(4)高齢者の社会的距離。深刻な疾病リスクが最も高い70歳以上の人々のみ社会から距離を置く
(5)学校および大学の閉鎖

こうした公衆衛生的介入によって2つのシナリオが想定されるという。

【シナリオ1】介入は感染拡大を遅らせるが、感染を完全には妨げない。このためハイリスクグループを保護しながら医療への需要を減らす。春から夏にかけての3〜4カ月の間に流行のピークが訪れる。

最適な政策(自宅隔離、自宅検疫、高齢者の社会的距離の組み合わせ)によりピーク時の医療需要が3分の2減少し、死亡が半減する可能性がある。

しかし流行は依然として26万人の死をもたらす可能性が高い。医療制度、特にICUを圧倒する恐れがある。

【シナリオ2】より集中的な介入は感染を止め、症例数を低レベルに減らすことができる。ただ介入が緩和されると症例数は増加すると予測される。症例数は減少するが介入し続けない限り、冬に流行するリスクがある。

全人口の社会的距離、症例の自宅隔離、家族の自宅検疫(および学校と大学の閉鎖の可能性)の組み合わせが必要になる可能性が高い。

対策を一時的に緩和することが可能かもしれないが、症例数が増加した場合は迅速に再導入する必要がある。今後数週間の中国や韓国の状況を注視する必要がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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