コラム

「国に『金くれ』とか言うなよ」という話? 再開された「表現の不自由展」は日本人の心を踏みにじるのか

2019年10月09日(水)18時30分

教科書に加害の歴史を記述するのは自虐史観だという主張はいつしか、日本はアジアを植民地支配から開放するため大東亜戦争を戦ったというプロパガンダにすり替えられ、日本を賛美する空気に支配されていきます。

「日本を貶めるな」は衰退と自信喪失の裏返し

戦後50年から70年にかけ、日本は「失われた20年」に苦しみ、中国に追い抜かれ、韓国にも激しく追い上げられています。

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「日本を貶めるな」という論調は、日本経済の衰退と自信喪失の裏返しに他なりません。真正保守を名乗る一部の人たちの強硬意見に引きずられ、自由に意見が言えない空気がさらに強まると、日本が再び成長する国になることはあり得ないでしょう。

確かに中国の軍事的な台頭と北朝鮮の核・ミサイル開発でアジアの安全保障環境は一変しました。

それでも、日本は、従軍慰安婦、強制連行をはじめ「バターン死の行進」や泰緬鉄道建設で起きた戦争捕虜虐待、南京事件など加害の歴史を学校で教え、子供たちにしっかり考えさせるべきだと筆者は考えます。過ちを二度と繰り返さないためには不可欠な作業だからです。

教えなければ歪んだ歴史観がSNSを通じてどんどん拡散し、傲岸不遜(ごうがんふそん)な日本人が増えてしまいます。

在日特権を許さない市民の会など極右のデモは2014年には約120件、2015年には約70件。日本に居住する外国出身者らに対する差別意識を助長・誘発する言動を解消する「ヘイトスピーチ解消法」が施行された16年には約40件まで減少しましたが、2017年には約50件に増加しています。

ヘイトスピーチ解消法には差別的な言動に対する禁止規定も罰則もありません。日本では「表現の自由」が保障されているからだそうです。

日本は同質な社会に従っている限り、世界の中で最も暮らしやすい国の一つであることは間違いありません。しかし私たち一人ひとりが加害の歴史にしっかり向き合うことができなければ、「国際社会において名誉ある地位を占める」(日本国憲法前文)ことはないでしょう。

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※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

ANN NEWS-YouTube
プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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