コラム

「国に『金くれ』とか言うなよ」という話? 再開された「表現の不自由展」は日本人の心を踏みにじるのか

2019年10月09日(水)18時30分

「子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」

「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改正を目指して再登板した安倍晋三首相は戦後70年談話でこう述べています。

「戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」

「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります」

戦後の教科書問題はもともと、被害の歴史だけでなく加害の歴史も子供たちに教える必要があると考える日教組・朝日新聞と、加害の歴史を教えるのは自虐史観だと反発する保守派・産経新聞の対立でした。

戦後50年から戦後70年にかけ激変した国内世論

筆者は産経新聞の記者時代、戦後50年企画「戦後史開封」の取材で教科書訴訟の家永三郎氏(当時82歳)に取材したことがあります。

戦後の歴史教科書は東京帝大史料編さん室で進められ、原稿はすべて英訳され、GHQ(連合国軍総司令部)のCIE(民間情報教育局)でチェックされました。トップバッターは、国民学校用『くにのあゆみ』の古代を執筆した東京高師教授の家永氏でした。

「私個人としては、神武天皇は書きたくなかった。(略)国定教科書なのだからと伝承の形で書いた。"(神武天皇は)当時からそう呼ばれていたのか"とCIEに尋ねられ、"後世につけられた漢風のおくり名だ"と答えた。"当時の名で"と求められ、神日本磐余彦天皇(かむやまといはれひこのすめらみこと)と書き直した」

CIEは神武天皇の「神(超国家主義)と武士(軍国主義)」という2つが一番気に入らなかったそうです。戦後50年当時、日本の国内世論はまだ牧歌的でした。家永氏のほかにも、朝日新聞の社長だった中江利忠氏も静岡支局の駆け出し記者時代に「第五福竜丸」事件を取材した秘話について、産経の記者だった筆者の取材に快く応じてくれました。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

与党消費減税案、即効性なく物価高騰対策にならない=

ワールド

インドネシア大統領、おいを中銀副総裁候補に指名 独

ワールド

原油先物は上昇、中国GDPを好感 グリーンランド問

ビジネス

訪日客、25年は約4270万人で過去最多 12月の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story