コラム

韓国の新規感染者数が初の4000人超え。日本とは何が違うのか?

2021年11月25日(木)16時23分

二番目の原因としては、韓国政府が、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために続けてきた厳しい行動制限を大きく緩和したことが挙げられる。韓国政府は10月末時点で1日の新規感染者数は依然1,500~2,200人に達していたにもかかわらず、ワクチンの接種完了率が70%を超えたのをきっかけに、経済活動を優先させる方向にコロナ対策を切り替え、11月1日から第1段階の行動制限緩和策を実施した。

午後10時までにしていた飲食店の店内営業時間の規制を撤廃したほか、屋外スポーツイベントの観客も定員の50%まで入場できるように緩和した。また、ワクチン接種を条件に最大8人に制限していた私的な集まりも、ワクチン接種の有無に関係なく首都圏では最大10人まで、非首都圏では最大12人まで許容することを決めた。このように行動制限を大きく緩和したせいか新規感染者数はじわじわと増加し続けている状況だ。

3番目の原因は、韓国の気温が日本より低い点だ。新規感染者が最も多く発生しているソウルの今年10月と11月の平均最低気温はそれぞれ0.5度と1.3度で、同じ期間の東京の平均最低気温15.2度と8.3度を大きく下回る。韓国では昨年も気温が下がる11月中旬から新規感染者が増加しはじめ、クリスマスに新規感染者数がピークに達した経験がある。今後日本でも気温が下がるにつれて、新規感染者数が増えるのではないかと心配である。

韓国政府は、現行の措置を4週間続け、2週間の評価期間を経てから、第2段階で大規模イベントを許可し、第3段階では会食の人数制限を撤廃する方針である。しかしながら、11月に第1段階を実施してから新規感染者数が増加していており、今後さらに気温が下がることを考えると、現在より行動規制を緩和することはそれほど簡単ではないと考えられる。

今後ファイザー製やモデルナ製のワクチンを中心に3回目の接種(ブースター接種)率を増やすと共に、気の緩みを最大限抑制しながら、新型コロナウイルスに対応していく必要があるだろう。日本では新規感染者数が大きく減少しているものの、まだその原因は正確に把握されていない。北海道では第6波の予兆が現れたという報道も出始めている。本文で紹介した韓国の事例が第6波の波を最大限小さくするのに少しでも貢献できれば幸いである。


プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、テクノロジー株の回復続く

ビジネス

NY外為市場=円上昇、155円台半ば 中国の米国債

ビジネス

再送-〔アングル〕自民圧勝でも円売り不発、「対話」

ワールド

バングラデシュ、米と貿易協定締結 繊維製品は一部が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 9
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 10
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story