韓国政府、ポストコロナ対策として「国民皆雇用保険」の導入に意欲
しかしながら、このような助成制度が実施されているにもかかわらず、2020年3月現在の自営業者の雇用保険制度の加入者数は24,731人で自営業者の0.2%に留まっている。なぜ、自営業者は雇用保険に加入ないのか? その理由としては、まず保険料の負担が大きいことが考えられるが、それより大きな理由として、雇用保険に加入することで所得と財産を捕捉されるのを嫌う傾向が挙げられる。所得や財産が把握されると、雇用保険以外にも公的医療保険、国民年金、労災保険のような他の公的保険にも加入する義務が生じるからだ。
多様な働き方に合わせた多様なセーフティーネットの実施を
では、自営業者以外の雇用関係によらない就業者はどうであろうか。もともと政府が打ち出した構想では、特殊雇用職従事者、ギグワーカー、フリーランスなども対象に含めるはずだった。しかし、その実現には課題が多い。何より自営業者と同様に、雇用関係によらない就業者の所得を捕捉するのは難しい。特にギグワーカーは複数の国にまたがって働いている可能性も高いので尚更だ。ギグワーカーはIT技術の発達により増え続けているものの、まだ正確な実態すら把握されていない。まず、政府がギグワーカーの実態を把握するために調査を行うと共に所得捕捉率を高めるための対策を工夫する必要がある。
自営業者や雇用関係によらない就業者を雇用保険に入れる際の保険料負担も明確にしなければならない。つまり、雇用保険の事業主負担分を加入者が全額負担するのか、事業主に責任を問うのか、税金で支援するのかが決まっていない。事業主に責任を問うと事業主の強い反発が予想される一方、税金で支援すると国の財政負担が大きくなる。
また、モラルハザードに対する対策も必要だ。自営業者や雇用関係によらない就業者は、雇用者に比べて仕事の量を調整、あるいは仕事をするかしないかを決める自由度が高く、失業給付を受給するために廃業や仕事を受注しないことを選択する可能性もある。
以上のことを考えると、「国民皆雇用保険制度」の施行はそれほど簡単ではない。今後、働き方がより一層多様化していくことを考えると、雇用保険制度の中にもそれに応じた多様性や柔軟性が求められるだろう。最近、日本でもギグワーカーやフリーランスなど雇用関係によらない就業者が増えていることを考えると、韓国政府の「国民皆雇用保険制度」の導入に関する動きは示唆するところが大きい。今後の動向が注目される。
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