『長生きできる町』から健康寿命を考える
1)影響:2008年度のWHOのデータによると低体重で生まれた赤ちゃんほど糖尿病になりやすい。
2)子どもの貧困が健康に与える影響:1960年と1990年におけるそれぞれの貧富状態を比較した分析結果によると、子ども時代から大人にかけて貧困であった場合、ずっと豊かであった人と比べて死亡率が4倍も高く、また子ども時代に貧困であると、認知症発症のリスクが高い。
3)経験の積み重ねの影響:物質的な欠乏のような貧困ではなく、家族が崩壊するといった社会的排除に直面し社会との繋がりが断たれてしまうと、教育という社会的経験を受けられなかったり、いい仕事(正規雇用)に就けなかったりするので、その結果制度による支援も受けられず、社会的貧困に陥ってしまう。
4)教育以外にできることとやるべきことの影響:保護者が困ったときに相談相手がいると生活困難の影響が軽減できる可能性は高くなる。英国の事例から見ると、子どもの貧困を減らすための取り組みや歩きたくなる街づくり、コミュニティづくりなどを実施すると、最も豊かな地域と最も貧しい地域の平均寿命の差は7年から4.4年に縮小された。
重要性が高まる0次予防
WHOは、原因となる社会経済的条件、あるいは環境的条件によって規定される行動的条件を変えることで人々を健康にするようなアプローチを「0次予防」と呼び、これまでの1次予防(健康推進)、2次予防(早期発見・早期治療)、3次予防(再発・悪化予防)と共に重視している。つまり、0次予防では、人々のつながりに着目し、健康に無関心な人まで健康になってしまう楽しいまちづくり、環境づくりを目指している。
0次予防の例としては、高血圧や脳卒中などの生活習慣病を予防するために、国が率先して国民の塩分摂取量を減らそうとする取り組みが挙げられる。塩の容器の穴の数を減らしたり、消費者が気付かない程度で徐々に食品の塩分量を減らしていったりすることで塩分摂取量を減らすことができる。
また、英国ではあらゆる業界の企業を巻き込み、食品製造における塩分の使用量を減らすことによって、国民の塩分摂取量を10%以上も減らした例がみられる。このように、国が率先して取り組むことによって、国民が置かれている環境を変え、その環境を変えることによって人の行動を変えるといういわゆるマクロレベルでの0次予防が可能であり、健康寿命の延長に繋がるだろう。
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