コラム

韓国が、持てる者と持たざる者の格差を縮めるために必要なこと

2019年10月31日(木)19時50分

経実連は、「財閥企業の土地取得とそれによる不労所得の発生を最大限抑制するためには、会計基準を変更し、すべての外部監査法の対象企業に適用する必要がある」と主張した。また、優先的に「公示対象企業集団(2018年現在、資産総額が5兆ウォン以上である60大企業(所属会社2,083社))が保有している不動産(土地と建物)の住所、面積、帳簿価額、公示地価などを義務的に公示させ、株主や投資家の国民が財閥企業の土地と不動産の保有実態を把握できるシステムを構築しなければならない」と提案した。

一方、8月22日に統計庁が発表した「2019年第2四半期家計動向調査」に基づいて、全世帯を5等分した所得五分位階級別に所得金額をみると、所得が最も低い所得下位20%世帯(第I階級)の1か月所得は132万5000ウォンで、対前年同四半期と変化がなかったものの、所得が最も高い所得上位20%世帯(第Ⅴ階級)の1カ月所得は942.6万ウォンで対前年同四半期より3.2%も増加し、所得格差はさらに拡大することになった。

低所得ほど負担大

さらに、韓国の最大野党である自由韓国党のチュギョンホ議員が9月8日に発表した資料によると、「均等化市場所得」を基準とした所得5分位倍率(農漁村は除外)は2017年の8.78倍から2019年には11.13倍に上昇していることが明らかになった。均等化市場所得(以下、当初所得)とは、世帯の勤労所得や事業所得、そして財産所得や私的移転所得の合計額、政府や公的機関からの支援金や年金などの公的移転所得は入らない。また、所得5分位倍率は、所得上位20%世帯の所得を所得下位20%世帯の所得で割ったもので、この数値が大きくなればなるほど所得格差が広がっていることを意味する。

均等化市場所得(当初所得)と均等化可処分所得(再分配後の所得)の概要
kim191031_2.jpg

一方、「均等化市場所得」に政府や公的機関からの支援金や年金などの「公的移転所得」を含めて、税金や社会保険料などの「公的移転支出」を差し引いた「均等化可処分所得」(以下、再分配後の所得)を基準とした所得5分位倍率も2017年の5.42倍から2018年には6.12倍に上昇した。再分配後の所得を基準とした所得5分位倍率が当初所得を基準とした所得5分位倍率を大きく下回る理由は、所得再分配政策により、所得下位20%世帯には国からの公的移転所得が支給されたことに比べて、所得上位20%世帯は税金や社会保険料を相対的に多く納めているからである。

均等化市場所得(当初所得)基準所得5分位倍率や均等化可処分所得(再分配後の所得)基準所得5分位倍率の推移
kim191031_3.jpg

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、エルサレムの遺跡公園を訪問 イスラエル

ワールド

カナダ首相、アングロに本社移転要請 テック買収の条

ワールド

インド、米通商代表と16日にニューデリーで貿易交渉

ビジネス

コアウィーブ、売れ残りクラウド容量をエヌビディアが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story