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イエメン内戦に新展開、分裂・内戦を繰り返してきた歴史的背景を読む
「アラブの春」によって国内を力で抑えていた軍事強権体制が崩れたことで、かつて王国として栄えたザイド派や、独立国だった南部勢力が権力闘争の表に出てきたという構図である。暫定政権を支えているのは、かつての軍事政権を支えたイエメン軍とスンニ派の部族勢力であるが、エジプトで生まれたイスラム政治組織「ムスリム同胞団」の流れをくむスンニ派イスラム組織「イスラーハ(イエメン改革党)」も有力勢力である。
南部の分離独立派をUAEが支援、サウジとUAEの関係はどうなる?
内戦から5年目にして南部の分離独立派が蜂起するのを見ると、25年前の南北イエメン内戦が再開したようで、デジャブのようだ。
イエメン人同士が戦う悲劇を一日も早く終わらせなければならないが、内戦が長期化、泥沼化している背景にはサウジやイランなど外国勢力の介入がある。今回、南部勢力を支援しているのはUAEであり、8月末に、暫定政権軍がアデンを奪回しようと攻勢をかけた時にUAE空軍が政権軍を空爆して、押し返した。
サウジとUAEは、それぞれムハンマド・ビン・サルマン皇太子とムハンマド・ビン・ザイド皇太子が実権を握り、トランプ米大統領と協調して対イラン強硬策を支えてきた。当初は、サウジとUAEが仲介して、分離独立派をアデンから撤退させるのではないかとの期待もあったが、UAEが空軍まで出して政権軍を排除した。
サウジとUAEの関係が今後、どのようになっていくかは不透明だが、これまでのような協力関係とはいかないだろう。
UAEは内戦が始まって以来、フーシ支配地区への空爆をする一方で、5000人規模の自国軍を駐留させ、南部勢力の民兵7万~9万人を訓練し、武器を提供したとされる。特に2016年にUAEが創設した「治安ベルト部隊」は8月のアデン蜂起でも主力を担った。
UAEは7月にイエメンから自国軍のほとんどを撤退させたが、イエメンへの関与は継続するとした。アデンを取り戻そうとした暫定政権軍に対してUAE空軍が空爆したことは、ペルシャ湾の中にある小国のUAEが、インド洋に面した南イエメンに影響力を維持することへの並々ならぬ執着を感じさせた。
中東の最貧国と言われるイエメンが、サウジやUAE、イランが露骨に軍事力を競う戦場となり、民衆が深刻な危機に瀕している。イエメンには過激派組織「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)の拠点もあり、シリアと同じく中東の矛盾を体現している。シリア内戦が終息に向けて動く中、イエメン内戦にはまだ終わりが見えない。
25年前の内戦で陥落したアデンに入った時、給水車から水を得ていた主婦のアミナさんが「大統領と副大統領の指導者の個人的ないさかいだよ。イエメン人は初めから一つなのに」と、吐き捨てるように言った言葉を思い出す。国内勢力の権力闘争と、外国の介入で生活をむちゃくちゃにされたイエメン人の思いは、いまも全く同じだろうと考える。
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