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カトリックかプロテスタントか......聞くに聞けない北アイルランドのタブー
唯一アイルランドが結束するのはラグビーの統一チームだ Issei Kato-REUTERS
<北アイルランドの人にはタブーな質問から独特のなまり、南北が唯一結束するあの分野まで北アイルランドの基礎知識、その後編>
北アイルランドについて興味を持ってくれた読者のために、もう少し「逸話的な」話を少々加えておきたい。
前回、北アイルランドには民族的マイノリティーが少ないということを書いた。僕の子供時代、こんなジョークがあった――若い男たちの集団がある若者をつかまえて、おまえはカトリックかそれともプロテスタントかと聞いた(自分たちとは「違うほう」だったら叩きのめしてやるつもりだったのだ)。「実は、僕はユダヤ人なんです」と、彼は答えた。男たちの集団は混乱した。それから1人が口を開いた。「ええと、それでお前はカトリック系ユダヤ人か、それともプロテスタント系ユダヤ人か?」
見知らぬ人に囲まれて自分の属性を明らかにさせられることは、北アイルランドでは本当に大変なことだった。でもそれは別にしても、あからさま過ぎる質問は通常、タブー視された。北アイルランド以外のイギリスのどこかで北アイルランドの人と会ったとき、イギリス人としてはその人がカトリックかプロテスタントか気になるところだが、失礼に当たるかもしれないから本人に聞くことはできない。外見からはどちらとも判別できない。時には名前がヒントになるかもしれないが(ある種の名前は明らかに「アイルランド的な」ものもある)、あまり知られていないアイルランド的な名前だってたくさんあるし、アイルランドっぽいけど実は違うという名前だってあるから、名前で判断するのはあまり正確ではない。
ある見分け方は、カトリックは北アイルランド第2の都市をデリーと言うが、プロテスタントはロンドンデリーと呼ぶということだ。他にはどうやら、カトリックは「h」の音を帯気音で発音するようだが、プロテスタントは発音しない、などがある。
でも北アイルランドの人々はこのことを十分承知しているから、こちらが「ベルファストじゃないほうの都市はなんて言うんだっけ?」とか「......はどういう綴りだっけ?」などと聞けば、瞬時に狙いを見破られてしまう。
緑がカトリックでオレンジがプロテスタント
緑色はアイルランドと関わりがあり、一方でオレンジ色はユニオニスト(イギリス残留を狙うプロテスタント)の色に採用されている(プロテスタントの王ウィリアム4世がオランダ出身の「オレンジ公」〔オランダ語でオラニエ公ウィレム〕だったことに由来する)。つまり緑色はカトリックでオレンジ色はプロテスタントを意味するわけだ。
僕は子供時代にこのことを知らずに、アイルランドのフォークソングを聞いて育った(僕の一家は西アイルランド出身)。その中に、好きな曲だけど奇妙な歌詞のものがあった。「これは見たこともないほどのゴタゴタだ/俺の父さんはオレンジ色で俺の母さんは緑色......」
いったいどちらが奇妙だろう。この歌詞を聞いて少年時代の僕が、この歌手の親は色鮮やかな緑色とオレンジ色なのだと思い込んでいたことか。それとも、同じ宗教でわずかに宗派の違う男女が結婚することがそんなにも異様だと思われていたことか。
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