増税延期に使われた伊勢志摩「赤っ恥」サミット(前編)
なお「リーマンショック前の状況と似ている」とは言っていない、商品価格等から「リーマンショック以来の落ち込みを見せているとの事実を説明した」上で世界経済のリスクを指摘したと弁明しているようですが、どちらに転んでも整合性が付かないため、"so what?" (リーマンショック以来の落ち込みを商品価格が見せたからといって何なんだ?)と各国首脳が反応したのも無理はありません。
フランスのル・モンド紙などは「危機感を強調する安倍氏にG7は唐突さを感じた」とのタイトルで仏オランド大統領の記者会見での言葉を引用しながら、米国の経済状況は改善しており、それほどではなくとも欧州の景気改善も指摘。不安があるとすれば中国のような新興国が困難に直面していること、原材料価格の価格変動が激しいこと、為替相場が安定に欠くこと、との3点が全員で共有した要素であること。余談ではありますが、日本国内で出回っているこのル・モンド紙の記事の紹介は、安倍総理の発言がG7の他のメンバーに見当外れと受け止められた事実を示す表現を、やや過剰に誇張しながら翻訳している、というのが『シャルリとは誰か?』(文春新書)がベストセラーとなっているフランスの歴史人口学者・家族人類学者であるエマニュエル・トッド氏の著作などを翻訳している堀茂樹教授の談です。
ル・モンド紙と言えば中道左派をイメージされるかもしれませんが、今や社会経済で左派とは言い切れず、堀教授の言葉を借りれば現状は「わりと新自由主義的」とのこと。あまりセンセーショナルなことは報道したがらないところは昔と変わらずではありますが、そのル・モンド紙をもってして、2014年から2016年までの商品価格の55%下落を示す資料を持ち出して、その下落の割合が2008年と似ている、現在の状況は2008年のサブプライム危機に類似した危機がやってくる状況と議長国である日本の安倍氏は強調したと書いている以上、各国首脳はそう受け止めたということでしょう。そして、仮に本意と違っていたとするならば、国際会議の場でキチンとその主張が各国首脳に伝わらなかったことになり、それはそれでかなり重大な問題を秘めていると言わざるをえません。
<後編に続く>
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