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イギリスのワクチン「優先確保」にEUが激怒、アストラゼネカの言い分は?
EU内の工場は、英国内の工場に比べればいまひとつなのは本当だとしても、それなりの量は生産しており、同社はそこのワクチンもイギリスにまわしていた、その背景にはイギリス政府がある。だからこのようなメカニズムが必要だった──というのが自然だろう。
そう考えれば、日本政府が懸念を発言するのも、ある程度納得がいく。
欧州工場でつくられている分は、予定より少ないとはいえ一定の量があり、それが(も)日本政府の購入分の中に含まれていた。でも、規制をかけられたら、日本が買える分がなくなってしまうのではないか......という心配である(日本政府は、同社とどういう契約なのか、ちゃんと詳しく説明するべきだ。記者も政治家も、政府に突っ込んで質問するべきだ)。
このように「EU内で生産された分も、イギリスにまわしていた」ならば、すべてがきれいにつじつまがあうのである。
それにしても、日本政府はイギリス政府や同社には何の苦情も公に言わないのは不思議である。どのみち、英国工場で多くが生産されているのは確実なのだ。
ちゃんと契約しているのだから、「すぐ送れ」と言わないまでも、懸念の一つくらいは公に発表するべきではないのか。EU側には言うのに、イギリス政府には何も言わないのか(どちらにも言う、どちらも言わないなら、まだわかるのだが)。
透明性の問題
この問題が「透明性の問題」とするEUの見解は、納得がいく。
二国間のなかで内密に話をしていると、外に話が出にくい。内々に何かを約束して、仮に破られても、文句は言えなくなる。それに、一国が何かをこそっと内密にやっても、わかりにくい。すべては闇のなかだ。
EUはそういう性質に大変厳しい目をもっている。27カ国が集まっているので、そういうことができないのだ。このEUという組織は、三言目には「透明性」である。
変なたとえで恐縮だが、ある人が、誰か一人に1000万円借りれば、お互いの心一つでなんとでもできやすい。こっそり何かを決めることも可能だ。でも、27人集まっている1つの組織で、それぞれ(1000万円÷27=)約38万円ずつ借りれば、そう簡単に勝手なことはお互いできないのと、同じ理屈だ。
27人の組織のほうは、一つの組織を維持するために、常に足並みを揃えようとする。一人が「38万円を返さなくてもいい」などと言いだしたら、絶対に返してほしい人もいるのだから、組織にとっては問題だ。また、ある人にはすぐに返したのに、別の人にはちっとも返さないのも問題だ。この組織では、27人の38万円の返済の経緯や理由を、常にオープンにする必要がある。
これと同じ理屈で、EUという組織の維持には、透明性が不可欠なのだ。「透明性」は「公表」とつながる考えだ。実際には、そうそう上手くいくものではない。それでもEU内では「しなければいけない」という意識は高く、かなりの努力をしている。
イギリス政府&アストラゼネカ社と日本政府の内々のワクチン交渉の内容は、表に出る可能性は少ないが、EUは政策となって表に出やすい。
今回、EUの立場が27カ国の組織ではなくて1カ国だったら「購入契約を結んだ製薬会社がワクチンを域外へ輸出する際は、申告と許可が必要」などというメカニズムをつくって発表する必要などなかったのだ。今回イギリスが行ったとみなされるように、こっそりと陰で行えばいいのだ。言い訳はなんとでもつけられる。このような類のことは、イギリスに限らず、日本でも他の国でも始終行われている。
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