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ノートルダム大火災の悪夢に今もうなされ続けるフランスの闇
火災が起きた頃、筆者のフェイスブックにはある記事が出回ってきた。それは「昨年の2018年、フランスでは1063件のカトリック教会で、火事などの反教会的な行為があった」というものだ。
2019年4月15日のノートルダムの火災の前に、まるで予兆にも見えるような火災が、パリ左岸のサン・シュルピス教会でも起きている。こちらは公式に「放火」と認定されている。ただ火元はホームレスの荷物が置いてある場所だった。そのために、ホームレス間のいざこざという説もある。この頃から「反教会的行為」については話題になり始めていた。
「反カトリック的な行為」をするのは誰か。2013年から18年の5年間で、フランスでは28のテロが起こった(成功・失敗の両方。未遂は含まず)。そのうち19で、犯人はイスラム過激派に忠誠を表明している。このような状況で、誰もが一度は疑いをもったに違いない。
当初から「ノートルダムの火災は放火だ」という声は根強かった。ただし「放火ではないか」と騒ぐのと、「犯人はイスラム教徒ではないか」と口に出して言うのには、天と地ほどの差がある。
フランスでは人種差別的発言は法律で禁じられている。証拠もないのに「イスラム教徒のせいだ」ということは、極右かネオナチの発言であり、逮捕されてもおかしくない行為である(差別的な言葉に関する感覚は日本のほうが遥かにゆるく、日本を見ていると「フランスでこのような発言をしたら、逮捕されるな」と思うことが多い)。
極右やネオナチ支持者のネット上の発言や、本当に親しい者だけしかいない家の中は別として、筆者が知る範囲では、公の場面でこのようなことを言うのは、一度も見たことも聞いたこともない。
再燃するネットの情報
このモスクへのテロを受けて、ネット上にはノートルダムの火災時に出回った画像が、再び出回ることになった。
火災時には、テレビの中継の画面から「あそこに人がいる!」「あれが放火犯だ!」という情報が出回った。
まず、屋根に人間がいる、というものだ。大聖堂の屋根には、ゴシック建築の特徴である、彫像や尖塔型の飾りがたくさんある。ある一つについて、これはAFP通信が、「あれは人間ではなくて○○像である」とツイッターで報じたが、その後「○○像ではなくて△△像だった」と訂正ツイッターを出している。このような曖昧さがさらなる誤解を招く結果になった。
そして、最も有名なのは、火事のさなか、外から見える大聖堂の中を、黄色いベストを着て歩く男の映像である。
画面の男性は、一般人や道路工事の人が着るような普通の黄色いベストを着ているように見える。そう、あの「黄色いベスト運動」で一般の人が着ていたような、どこでも安価で手に入るものである。
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