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陰謀論とロシアの世論操作を育てた欧米民主主義国の格差
現在、格差の下位にいる人々がまとまって影響力を行使することは難しい。彼らは多様であり、まとまるためのイデオロギーもない。共通しているのは富裕層=エスタブリッシュメントへの反発である。また、共感弱者(男性、白人など)は共感強者(LGBT、移民など)に反感を持つ傾向がある。共感弱者とはさきほどの共感格差の下位にいる人々でメディアで取り上げられることが少なく、共感を得にくい。共感強者とはメディアに取り上げられ、結果として政治の場でも取り上げられやすい。
エスタブリッシュメントの政治や文化から疎外された人々の一部(無視できない規模になりつつある)は陰謀論、白人至上主義などに傾倒するようになった。コロナ禍において、その傾向は強まった。
2021年から国家の現状変更の手段としてクーデターなど武力によるものが増加した。それまでは選挙によって選ばれた政治家が独裁的になっていたが、近年は武力行使が多い。陰謀論者や白人至上主義者なども武装化を進めている。
陰謀論者、白人至上主義者などは、エスタブリッシュメントに反発や憎しみをいだいている格差低位の人々から多くのアクセスを得られるため、SNSプラットフォームはこれらを優遇し、広告収入を与えることで影響力を拡大させた。フェイスブックペーパーでその実態が暴かれ、コロナ禍では陰謀論者などのサイトが潤った。ロシアや中国はこれらの発信を拡散することでさらに拡大させた。このへんについては、過去の記事で書いたのでご参照いただきたい。
今後、気候変動など世界全体の問題でも格差底辺の人々は無視され、過度な負担を押しつけられる可能性が高い。たとえば二酸化炭素排出量を個人に配分すると、格差底辺の人々はすでに目標を達成していることが多い。しかし、こうしたことは税率に反映されない。
経済環境が悪化しているため、こうした人々の境遇は悪化しており、より強い反発をいだくようになっている可能性がある。
現在の欧米の民主主義国はガソリンをまいた状態
高水準の資産の偏りと、それが政治的選択によってもたらされたことなどから、欧米の民主主義国における分断は危険な状態まで高まっている。言わば現在の欧米の民主主義国はガソリンをまいた状態になっている。小さな火花で燃え上がる。一気に世界に燃え広がることはないが、散発的に欧米の民主主義国各国で過激なデモ、暴動など起き、社会は不安定になる。選挙が騒動のきっかけになることも増える。ネットを利用した世論操作はガソリンに火をつける安全で効果的な方法であり、相手国の陰謀論や白人至上主義グループを焚きつければよいので関与も疑われにくい。
問題は防御側で、いくらデジタル影響工作や偽情報などにフォーカスした対策をしても効果はうすい。ファクトチェック、情報リテラシー向上に効果がないことはよく知られているが、「情報弱者に正しい知識や考え方を授ける」というように見えてしまうことも問題だろう。また、SNSプラットフォームの対策も、そもそも彼は問題を悪化させた当時者だし、利益に反する行動を取りにくい以上、制度や法律の強制の範囲(それもすり抜ける可能性が高いが)とPR効果のあることしか期待できない(実効性の乏しいファクトチェックや情報リテラシー向上への支援など)。
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