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陰謀論とロシアの世論操作を育てた欧米民主主義国の格差
世界人口の半分を占める人々の総資産は世界の2%しかない
世界の人口の半数を占める最貧困層の保有している資産は全体のわずか2%、これに対して最も裕福な10%の人々は世界の全資産の76%を所有している。そして悪化している。この状況は国によって異なるが、中東やアメリカでは格差は大きく、ヨーロッパでは比較的格差が小さい。
なお、今回の記事は主として世界の不平等に関するデータと分析、提言を行っているWorld Inequality Database (WID.world)のレポートを元にしている。世界各国から100人以上の専門家が参加しており、経済学者のピケティ氏も参加している。
かつて欧米の民主主義国の左派政党は低学歴・低所得者層を支持母体としていたが、徐々に高学歴・高所得層へとシフトしていった。その結果、格差の下位にいる人々の声を政治の場に届けるのはポピュリストのみになった。グラフの赤は学歴、青は所得、緑は資産で、高学歴、高所得、高資産(いずれも上位10%)から低学歴、低所得、低資産(いずれも下位90%)の投票割合を引いたものになっている。数値が増加することは高学歴、高所得、高資産の人々の投票数の増加を示す。民主党を支持の中心は、投票者の90%を占める低位の人々ではなく、上位10%の人々に変化している。同様の傾向は他の欧米の民主主義国でも見られる。
格差は政治的選択の結果であり、外部要因によるものではない。特にグローバリゼーションと規制緩和が格差を広げたと考えられている。政党は資金提供者の影響を受けるようになり、立法など多くの権限が行政機関や司法機関(ジュリストクラシー)もしくは国際機関といった国内の選挙とは関係ない組織に委譲された。経済では、脱労働組合化、規制の撤廃、グローバリゼーションによる海外労働力の活用などを進めて労働者の影響力を下げた。文化の面では監視役となっていた宗教や市民の倫理観からリバタリアン的価値感に変わった。一連の規制緩和で公的事業が民間に移行したため、民間の資産は増加し、政府資産は大幅に減少した。こうした一連の変化によって人口で多数を占める下位の人々の支持なしに政権運営が可能な状態になっていき、格差の下位にいる人々は政治、経済、文化の面で不可視化されることになった。民主主義国において、こうした格差は是正されるべきものであるにもかかわらず、放置され、不可視にされてきたことが反発や不満の原因である。
政治的選択で「人口で多数を占める人々の支持なしに政権運営が可能な状態」にする国家を民主主義と呼んでよいのかすごく疑問だが、欧米社会の認識としてはアメリカは民主主義国のリーダーなのである。
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