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ロシアが情報戦で負けたという誤解
では、なぜ、我々は国際世論がロシアを非難していると考えたのだろうか? 答えは簡単で、大手メディアや専門家、著名人がそう言ったからである。信頼でき、主流派であると誤認しやすい形で同じような情報が入ってくれば、それを信じてしまうのは当然だ。
日本に住む我々にとっての国際世論とは、欧米を中心とした先進国集団=グローバルノース(欧米プラス日本、韓国)のメディア(主としてアメリカ)と専門家、著名人によって作られるものなのだ。国際的メディアと聞いてすぐに思い浮かぶのは、ニューヨーク・タイムズやワシントンポスト、CNN、BBCあたりだろう。これらはすべて欧米であり、ほとんどがアメリカのものだ。
よく目にする信頼のおけそうな専門家や著名人もほとんどもグローバルノース、それもアメリカ人が圧倒的に多い。そのため、我々は常にグローバルノースという多数派ではないグループの視点で世界を見ていることになる。グローバルサウスの状況がグローバルノースとは異なっていることは4月の段階で、Centre for the Analysis of Social Media at the Demos のカール・ミラーが指摘している。
同じことは新疆ウイグル問題や香港の問題でも起きた。グローバルノースのメディアの多くは、中国を批判する国が多数であるかのように報じたが、そうではなかった。
「ロシアが情報戦で負けた」というのは、グローバルノースから見た世界の中では正しいかもしれないが、世界全体を見た場合はそうではない。少なくとも「負けた」と断言するのは早そうだ。情報戦やサイバー戦は「目に見えない戦い」であり、実態がわかるまでは時間がかかるし、最後までわからないこともある。そのため侵攻から1カ月も経たないうちの「勝利宣言」は短慮のそしりを免れない。実は私自身も3月頃、ロシアは負けたと言っていたので自省の念を込めてそう考える。なので今でも評価は流動的で確定していないと考えた方がよいだろう。
余談であるが、次の図のように世界の人口は欧米以外の地域が長らく多数を占めていた。欧米以外の地域が独立国となった現在、いまだに欧米が国際世論あるいは国際秩序を主導していること自体に無理があるのかもしれない。
グローバルノースにも広がっていた親ロシア派
我々に見えていなかったのはグローバルサウスだけではなかった。もっと身近に見えない世界があったのである。それは言わば反主流派、反ワクチン、陰謀論、白人至上主義といったグループがロシアを支持していた。ロシアはコロナ禍において、バイオラボ陰謀論や反ワクチンなどの情報をばらまき、これらのグループからの支持を受け、浸透していった。
その結果、ウクライナ侵攻と同時に、これらのグループが親ロシア、反ウクライナの発言をし始める事態となった。もちろん。こうしたグループの主張が国際世論を形成する大手メディアで肯定的に取り上げられることはないし、まともに取り合う国際的専門家や著名人もほとんどいない。だから我々には見えていなかった。
陰謀論で有名なQAnonは以前からロシアが流布する、「コロナはアメリカの陰謀」という説を支持しており、今回のウクライナ侵攻によってロシアがウクライナ国内のバイオラボを破壊したと主張している。
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