香港のデリバティブ取引急増、空前の水準に 株価乱高下など背景

香港市場では今年に入りデリバティブ取引が急増し、空前の水準に達している。写真は、香港の交易広場。2023年8月、香港で撮影(2025年 ロイター/Tyrone Siu)
Summer Zhen
[香港 28日 ロイター] - 香港市場では今年に入りデリバティブ取引が急増し、空前の水準に達している。急激な株価変動やヘッジファンドによる利用が背景だ。
香港取引所の先物・オプション取引の建玉は現時点で2200万枚。年初から3カ月足らずで、これまでの最高記録だった2024年の水準を70%上回った。
市場関係者によると、中国のハイテク株を巡る熱狂でデリバティブ取引が急増しているほか、地政学や関税を巡る不透明感を受けて、ロング・ショート型ファンドの間でヘッジ手段としての利用が増えている。
香港取引所は過去6カ月間でデリバティブの提供を強化。リスクを減らしつつ中国への投資を増やしたい投資家の需要に対応している。
新商品には、週次ハンセンテック指数オプションや個別株10銘柄の週次オプションなどが含まれる。
市場関係者によると、特にテンセント、アリババ、シャオミなど、大型ハイテク株のオプション取引が急増。
BNPパリバ(香港)のアジア太平洋株式・デリバティブ戦略責任者、ジェイソン・ルイ氏は、一部の大型株が急騰したことを受けて、リターンの最大化を目指した個別株オプションの取引が増えていると指摘した。
香港株式市場のハンセン指数は、中国の新興AI(人工知能)企業ディープシークの登場や、習近平国家主席がハイテク企業経営者との異例の会合を開いたことを受けて、今年に入り17%急伸。アリババやシャオミの株価はともに50%値上がりしている。
香港を拠点とするマクロヘッジファンド、オーシャン・アレテは、潜在的な市場の乱高下に備えてヘッジをかけながら、中国株へのエクスポージャーを増やしている。
同社の投資家向け広報責任者は「当社が乗り越えようとしている主な不透明要因には、米中関係と広範な地政学が含まれる。(ボラティリティーは)今後、長期にわたって高止まりする」と述べた。
ハンセン指数ボラティリティー・インデックスは昨年10月に2年ぶりの高水準を記録。ハンセン指数が3年ぶり高値に急騰した先月も再び上昇した。
ヘッジファンドのアスプーン・キャピタルは、関税のリスクをヘッジするため、中国ハイテク指数のプットオプションを買い増した。
同社のライアン・イン最高運用責任者は「今、市場は関税の影響をあまりにも甘く見ている」と指摘する。
BNPパリバのアジア太平洋プライムサービス責任者、ニック・シルバー氏は、投資家は近年、不安定な市場の値動きに慣れる必要があったとし「デリバティブの利用は、そうした取引を行う上で恐らく最も効率的な方法だ」と述べた。