ニュース速報
ワールド

情報BOX:トランプ関税これまでの概要、実施措置やさまざまな威嚇内容

2025年02月20日(木)09時55分

 トランプ米大統領は1月20日に第2次政権を発足させて以来、輸入関税について実際に幾つかの措置を発動したほか、より頻繁に発動をちらつかせてきた。米首都ワシントンで1月16日撮影(2025年 ロイター/Marko Djurica)

[19日 ロイター] - トランプ米大統領は1月20日に第2次政権を発足させて以来、輸入関税について実際に幾つかの措置を発動したほか、より頻繁に発動をちらつかせてきた。

自らの政策要求をかなえるために言及した範囲は外国製品への一律関税から、特定のセクターや地域・国を対象とするものまで多岐にわたる。

ただトランプ氏は脅しの中身を何度も修正し、他国や企業は次に何が出てくるのか不透明感に直面している。

現段階までのトランプ氏の通商政策関連に関する実際の動きや威嚇の内容は以下の通り。

<一律関税>

トランプ氏の構想の中核には、米国に輸入される全ての製品に一律の関税を段階的に適用することが含まれている。

先週トランプ氏は、米国製品に関税を課している国に「相互関税」を発動する計画の策定、および自動車の安全性基準などで米国車を排除したり、付加価値税で米国車の価格を押し上げたりする非関税障壁に対処するよう関係省庁に指示した。

かつて関税は米国の主な租税収入だったとはいえ、過去数十年間で税収に占める比率は低下していた。エコノミストは、トランプ氏の政策は輸入業者がコストを消費者に転嫁する公算が大きい以上、物価上昇をもたらすと警告する。

米国の貿易相手国は、米国の農産物やエネルギー、機械製品に報復関税を課す可能性があり、世界的な貿易戦争に発展して企業や投資家にとっては不確実性が生じかねない。

<特定国対象の関税>

トランプ氏の関税案は複数の重要な国も標的にしている。

◎メキシコとカナダ:2024年1─11月で見ると米国の二国間貿易相手でメキシコは最大、カナダは2番目の規模だった。トランプ氏は4日、移民や合成麻薬フェンタニル流入の報復として両国の輸入品に25%の関税を課すと表明したが、すぐに3月4日まで発動を1カ月停止し、協議を続ける方針に転換した。

カナダの米国向け主要輸出品は原油などのエネルギー製品や、北米の自動車生産チェーンの一環としての自動車や自動車部品。メキシコから米国には工業や自動車セクターへさまざまな製品が輸出されている。

◎中国:トランプ氏は公約通り、中国製品に10%の追加関税を適用した。中国は一部の米国製品を対象に報復関税を課すと発表している。第1次トランプ政権時代、米中は長期の貿易戦争に突入し、双方の経済が傷付いた。

◎欧州:トランプ氏は欧州連合(EU)やその他欧州諸国が抱える対米貿易黒字を問題視。これらの国の製品を関税対象にするか、米国の天然ガス輸出能力が限界に近づいているにもかかわらず、米国からもっと石油やガスを買うよう要求するつもりだ。

EU欧州委員会は14日、相互関税は間違った方向に進む道だとの見解を示した。

◎ロシア:トランプ氏はウクライナでの戦争終結に向けた合意が早期にまとまらない場合、ロシアや関係国に関税や各種制裁を発動すると威嚇している。

◎インドほかBRICS:インドのモディ首相は先週ワシントンでトランプ氏と会談し、関税軽減や米国産石油・ガス、戦闘機購入拡大についての協議を提案した。

インドは米国の主要貿易相手国としては米製品に最も高い関税を適用している。

トランプ氏はBRICS諸国全般に対しても、新たな共通通貨を創設しないと約束しない場合、関税の発動をちらつかせている。

◎コロンビア:トランプ氏は強制送還した不法移民をコロンビアが受け入れるのを拒否した後、同国製品に25%の関税を適用する意向を表明したが、その後両国は移民対応で合意し、関税発動は見送られた。

<品目別の関税>

◎金属類:トランプ氏は16日、自動車メーカーや航空宇宙企業、建設、インフラ整備などに利用される全ての輸入鉄鋼・アルミニウムに関税を課すと発言した。世界銀行のデータによると、米国は世界最大のアルミ輸入国。鉄鋼貿易では米国は10年にわたって赤字を計上し、世界2位の輸入国。半分以上をカナダ、メキシコ、ブラジルから輸入している。

◎半導体:トランプ氏は輸入半導体に適用する関税率も当初「25%ないしそれ以上」に設定し、その後大幅に引き上げると発言したものの、いつから実行するかは明言していない。

半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はエヌビディアやアップルなどの米国企業と取引しており、24年は全収入の7割を北米の顧客から得ていた。

◎医薬品:トランプ氏が打ち出した輸入医薬品に対する25%かそれ以上の関税は、武田薬品工業やアステラス製薬、第一三共製薬、エーザイといった大手メーカーが拠点を置く日本にとって重圧になりかねない。インドも大半の国内後発薬メーカーが米国を最大の市場としているだけに影響を受けそうだ。インド製薬業界の全輸出の約31%は米国が占める。

◎自動車:トランプ氏は自動車への関税は早ければ4月2日に発動すると述べている。例えばEUが域内へ輸入される自動車に課している税率は10%と、米国の輸入乗用車への適用税率2.5%の4倍に上る。ただ米国は現在、メキシコとカナダ以外の国から輸入されるピックアップトラックには25%の税率を課している。

トランプ氏はEVを含めた他の車種には100%かそれ以上の税率を適用する考えも打ち出した。24年に米自動車業界がカナダとメキシコから輸入した製品の総額は2020億ドルを超える。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中